夫婦円満の秘訣は笑い!ダーリンは妖怪?!(2) 妖怪料理
こんにちは ごにょごにょ研究室のガッツかよめです。
以前、ダーリンが妖怪手洗いであるというお話をしたら、これが意外に好評! そこで第2弾をお送りします。今回は、何をやっても完璧なダーリンが、生まれて初めて料理を作った時の話です。彼は料理についても、潜在能力は十分と思われるものの、経験値は皆無。果たして、その驚きの顛末は…。ダーリンが「妖怪」であることの詳細についてはぜひともこちらをご覧ください。
できる男ならぬ、できる妖怪、そのスマートな仕事ぶり
妖怪は基本、非常に几帳面で完璧主義者である。反して私、妖怪の女房は、全く無頓着な人間である。妖怪は女房のことを「ルール無用の危険人物」と考え、常に警戒している。「ルール無用の危険人物」の詳細についてはこちらをご覧ください。
たとえば女房は、ドアの鍵は閉め忘れる、水は流しっぱなし、買い物に行けば財布を持ち忘れる、旅館に行けば便所のスリッパで館内いたるところ歩き回る、など四六時中何かしらヘマをやらかしているが、妖怪は決してそのようなヘマはしない。
妖怪は玄関の鍵を閉めた後は確実に閉まっているかどうか、必ず3回自ら扉を引っ張って開かないことを確かめる。2回でも4回でもなく必ず3回行うところが鍵である。また、自動車を運転すれば信号のない交差点で車掌さんのように、「右よし、左よし、発車オーライ」と指さし確認を行う。
妖怪は作業を行うときには、必ず作業時間を推測し、手順を検討し、必要物を準備し、関係各所への根回しも怠らず、最も効率的に遂行する方法を選択する。そして自ら決めた時間までに必ずこれを行うのである。
このため、妖怪は妖怪であるにも関わらず、町内の要人などからの信望も厚く、輪番で回ってきた役員などでも、任期の延長を乞われたりするほどである。
会社でも、新入社員として運転手をしていた頃、配車担当のやり方が気に食わないと、なんとパソコンで自社用の配車ソフトを作ってしまったのだ。それによって配車係は手作業での配車から解放され、配車ミスも激減し、それまではかなわなかった運転手全員の適正な休み時間の確保という多大な恩恵ももたらした。そして、そのソフトは妖怪自らがメンテナンスをしつつ、社になくてはならないシステムとして、20年以上貢献し続けている。
妖怪は家庭内の仕事に関しても非常に計画性を持って緻密に行い、ゴミ出し、洗濯、掃除、これらすべてにおいて女房よりも完成度の高い仕事をした。子守に関しても、妖怪の仕事の細やかさは特筆すべきものがある。
娘が3歳のころには、妖怪はよく娘と一緒にプラネタリウムに行っていた。その頃、女房が勉学のため学校に通っていたので、勉強時間を確保できるようにと、娘を連れ出してくれていたのである。そのプラネタリウムで娘のおむつを替えた妖怪は、ゴミ箱におむつを捨てず、きちんと持ち帰った。「俺はプラネタリウムの掃除のおばちゃんに褒められた」と妖怪は30回以上、得意げに自慢した。
これによって娘には、プラネタリウムといえばオムツを想像するという条件反射が形成され、娘は30歳近くなった今でもプラネタリウムでデートはできないのである。
こうして改めて記述してみると、妖怪は本当に「できる」。その計画性、慎重さ、問題解決能力、洞察力、加えて倫理感の高さ、すべてが群を抜いている。まるで聖徳太子のようである。女房としては人物としての聖徳太子より、印刷された聖徳太子の方に興味があります。
できすぎる妖怪ができない、たったひとつのこと
あれは新婚の頃の出来事だった。女房は外での仕事も持っていたが、仕事でも計画性がないために当然残業が生じ、どんなに走って帰っても帰宅時間は妖怪の方が早いのが常であった。
もちろん妖怪手洗いは、己の手のみならず、衣服や部屋などに関しても清潔さを好んだため、共働きであるにも関わらず、妖怪の棲家は整理整頓が行き届き、常にチリひとつなく、衣服も、清潔なものが過不足なく整然とタンスにしまわれた。
その妖怪が、女房がやるまで、ただひたすら辛抱強く待っていたもの、それが料理であった。
パソコンでプログラミングができ、オーディオを手作りするほど、ITにも電気にも強い妖怪が、なぜ電子レンジでごはんのあたためができないないのか、また自分専用のはんだごてを持ち、木工を好み、さまざまな工具を巧みにあやつる妖怪が、なぜレタスとキャベツの区別がつかず、簡単な炒め物ひとつ作れないのか、全くもって理解不能だ。
そこで女房は考えた。
この先も続く共働き、何とかして妖怪に料理に参戦してもらいたいと。なにせ万能の妖怪であるからして、料理の分野でも、必ずや卓越した才能を発揮するに違いない。女房は思い切って、妖怪に料理を作ってほしいと頼んでみた。
妖怪の「初めての料理」が始まった!!
その頃は(今もさして変わらないが)女房は料理が下手であったので、妖怪としては自分でやった方がおいしいものが食べられると考えたのかもしれない。妖怪は、料理を作ってみることを承諾したのだ。
ごそごそと女房の料理の本を取り出して、妖怪が選んだメニューはミートローフであった。
女房は心配だった。妖怪が自分が食べたいものを作ろうとした心理は理解できるが、その手間や必要なスキルの難易度が全く分かっていない。全くの料理初心者がミートローフを一人で作るというのは、ボールが足に当たらない人がサッカーのJリーグに出る、あるいは基礎的な英単語もわからない人が同時通訳をする、前転ができない人がバック転をする、天才でもない普通の小学生が司法試験を受ける、というようなものである。
料理の本の中のミートローフは、「おもてなしに向く献立」などと調理意欲をかきたてるタイトルが付けられ、盛り付けも凝っていて、中国人が切ったのかと思うほどの、美しい飾り切りの花かご型のプチトマトまで添えられていた。
果たして妖怪の初めての料理の出来栄えは?!
完璧主義で血液型はAAAかと思われる妖怪(妖怪に血液型があるのかどうか不明だが)は、全ての材料を本のとおりに買い揃え、台所にこもり、人生初の料理に取り掛かったのである。
なにせ人から指導を受けるのが死ぬほど嫌いな妖怪である。女房が余計な口出しをしたら、怒って妖怪の里へ引き上げてしまうかもしれない。
女房は鶴の恩返しに出てくるおじいさんのように、台所をのぞきたい気持ちをじっとこらえて料理ができるのを待った。
待つこと3時間、妖怪は本当に全く料理の本の写真どおりの、見事なミートローフを作り上げた。!
ジューシーなのに歯ごたえもほどほど、見事な焼き加減だ。手作りソースも肉との相性が抜群で、玉ねぎの甘みと肉のうまみが口に広がり、1口食べただけで女房はとても幸せな気分になった。何やらスパイスも結構入れていたのに、絶妙なコントロールで嫌味がないのは驚きである。おまけにプチトマトにまで中国人も真っ青な飾り切りが施してあり、女房が知らないうちに修行に行っていたのかと思う仕上がりである。妖怪のことである、玉ねぎのみじん切りも物差しで測って1ミリに切りそろえていたに違いない。後は手際さえよければ、明日からこれを売って暮らしていこうかと真剣に考えた女房であった。
「びっくりするくらい美味しい。ありがとう」
「当たり前だ。やる気になればこんなもんだ」
と、妖怪は胸をはったが、その瞬間に生気をなくし、リビングの床に倒れて死んだように寝てしまった。汚れ仕事を他人に押し付けることが誰より嫌いな妖怪は、後片付けも一人でこなし、エネルギーを使い果たしてしまった。女房は、妖怪がこのまま床に吸い込まれるように消滅していくのではないかと心配だった。まあ、その時に限らず、妖怪の昼寝はいつも、床に吸い込まれて消滅しそうな雰囲気をただよわせているのではあったが。
妖怪の絶品ミートローフをもう一度
それから何度か、女房は妖怪に料理を作ってほしいと懇願してみたのだが、全く聞き入れられない。あの手この手を駆使し、何とか妖怪を台所へ向かわせようとするが、
「俺が料理をつくると今から3時間はかかる。そして、その後は全く何もできない。それでもいいのか?」
と、マフィアの親分がしくじった子分を始末するときのような恐ろしい形相で、女房に詰め寄るのだ。
女房は、死ぬまでにもう一度だけでいいから、あの幻のミートローフを食べてみたいと思っている。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
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