サイドマンとしての海野雅威・NYのジャズシーンの今を聴く|ゴニョ研
こんにちは
海野雅威(うんの・ただたか)さんの追っかけをやっているガッツかよめです。
信じられない悲しい出来事が起こってしまいました。
米ニューヨーク市で活躍するジャズピアニスト、海野雅威(うんのただたか)さん(40)が9月末に市内で集団暴行を受け、右肩骨折など大けがを負った。クラウドファンディングで約9万ドル(約950万円)の寄付が集まったが、再びステージに立てる見通しは立っていないという。
5日に取材に応じた海野さんやニューヨーク市警によると、事件があったのは9月27日午後7時半ごろ。仕事を終えて自宅近くの地下鉄駅で降りたところ、改札にいた10代とみられる少年から突然、殴りかかられた。駅構外に逃げた後も追いかけられ、少年少女8人ほどから暴行を受けた。「チャイニーズ」と話す声を聞いたという。容疑者の逮捕には至っていない。
海野さんは事件後、目撃者が呼んだ救急車で近くの病院に運ばれ、右肩の骨折や全身の打撲と診断を受けた。命に別条はないが、全治は未定で、1週間以上たったいまも痛みがひかない状態という。6月に長男がうまれたばかりだが、抱きかかえることもできない。今後、活動を再開できるかもわからないという。
このニュースは、SNSで瞬く間に広がりました。
記事にあるように多額の寄付が集まり、いったん寄付の募集は終了となりました。
しかし、支援者からの再開の要望を受けて、海野さんの親友であるドラマー Jerome Jennings さんが立ち上げた“Support for Tadataka and Family" のサイトは、現在も寄付を募っています。
突然8人もの暴徒に襲われた海野さん。
どれほど恐ろしかったことでしょう。
身体の傷ばかりでなく、心の傷も心配です。
私は、いつも心に響く演奏で私を励ましてくれる海野さんに、お金を出す以外の支援ができないのが悲しいと思っていました。
そんな中で、海野さんのライブで知り合ったお友達とこの件を話していたら、今、海野さんのリーダーアルバムが全く手に入らず、ネットで配信もされていないので悲しいと言うではありませんか?
そんな時こそ、暇さえあればネットで海野さんの演奏を検索している、遠距離ストーカー・ガッツかよめの出番です。
海野さんのリーダーアルバムは最高ですが、サイドマンとしての海野さんも、これまた本当にすばらしいんです。
そんな演奏をご紹介する記事を書くことにしました。
海野雅威がサイドマンとして参加アルバム
“Remembering U featuring Roy Hargrove",Jimmy Cobb
ジミー・コブの最後のアルバムで、伝説のエンジニア、ルディ・バンゲルダーの最後の仕事にもなりました。
1,5,8では、ロイ・ハーグローヴも吹いています。
このアルバムにはマイケル・ジャクソンの曲が2曲も入っていて、2曲とも海野さんのピアノが本当に曲にピッタリで、まるで海野さんのオリジナルのようなんですよね。
ということで、オススメは3の “Man in the Miller" です。
“It’s About Time",Jacob Melchior
2010年リリースのアルバム。
ジェイコブ・メルヒオールは1970年にデンマークで生まれ、ニューヨークで活躍するドラマーです。
このアルバムでの私のおすすめは、なんといっても6曲め。
スティーヴィー・ワンダー作曲の “Bird of Beauty" です。
海野さんのピアノはメロディアスでかつ躍動的で本当に美しい鳥のよう。
メルヒオールは、ラテンがうまいドラマーなんでしょうね。
むっちゃキレッキレです。
またハッサン・シャクアーのベースソロが最高なんですよ。
ぜひ3人がからみあう4バースをお聴きください。
“Mornig Light",Ken Fowser
2020年リリースのテナーサックス奏者ケン・フォウサーのアルバム。
全曲がケン・フォウサーのオリジナルです。
曲もアレンジもソロも高水準。
ドラマチックなソロに身を乗り出して聴き入っていると、あっという間に1曲が終わります。
私のオススメは、5の “This That & the Other Thing"。
ホーン隊のキレが最高で、メロディがキャッチーなんですよね。
そして、「ああ、そこはだめ」と思わず身悶えたくなる、センスの良すぎる海野さんのフィルやバッキングが、そこここに散りばめられていて、元気が出ます。
“Almost Sunrise",Eyal Vilner Big Band
イスラエル生まれのアルトサックス奏者でフルート奏者の Eyal Vilner のビッグバンドのアルバム。
2015年のリリースです。
何曲かはヴォーカルも入っています。
ホーンセクションも迫力のあるすばらしい演奏なんですが、海野さんのピアノの存在感は絶大です。
オススメはタイトル曲 “Almost Sunrise"。
試聴では聴けないんですが、曲の始めは海野さんのそれはそれはリリカルなソロ。
そこへクラリネットが加わり、フルートも入り、ジャズワルツになるんですが、クラッシックのように壮大で聴きごたえがあります。
本当に目の前に太陽がのぼってくるような曲です。
“Girl Who Loves",Stephanie Sellars
2019年リリース、ヴォーカリスト・ステファニー・セラーズのアルバムです。
ミディアムテンポのスタンダードナンバーが多く、リラックスして弾く海野さんの笑顔が浮かぶような演奏です。
akiko や、Tiffany のアルバムなど、海野さんの歌伴は名盤ぞろい。
本当にものすごく存在感があってピアノが印象に残るのに、決してヴォーカルをジャマしないんです。
ステファニー・セラーズのアルバムでのオススメは、3の “It had to be You" 。
軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)とは、この曲のピアノのためにある言葉でしょうか。
何度聴いてもうれしくなります。
“Catch and Release",Nick Hempton
2015年リリース。
ニック・ヘンプトンは、オーストラリア出身のテナー・サックス奏者です。
海野さんのピアノは1〜3。
小気味いいスウィングで思わず体が揺れ、メロディを口ずさんでしまいます。
私は1の “Hanging for Dear Life" でいつも踊っています。
“Paradice",George DeLancey
1988年生まれのアメリカ人ベーシスト、ジョージ・デランシーの2020年リリースのアルバムです。
2の “Bohemia After Dark" は息を呑むような疾走感があって最高です。
おなじみのワルツ、"Skating in Centralpark" が美しく、思わず自分が優雅にスケーティングできるような錯覚に陥ってしまいます。
ラストの “All the Things You are" は、1コーラス目でベースがメロディを演奏するアレンジが秀逸です。
この曲にピアノソロがないのがちょっと寂しいですが。
海野雅威がサイドマンとして参加しているアルバムからNYジャズの今が聴こえる
どれもすばらしいアルバムばかり。
NYジャズシーンの今というのは、こんな感じなんでしょうね。
海野さんがサイドマンとして参加するアルバムを聴いていると、海野さんがNYのジャズシーンにとって、もはや欠くべからざる存在なのではないかと思えてきました。
で、次にご紹介するのは、本当に「ニューヨークの今」なのだろうなというシングル。
“Been Down This Road Before",Clifton Anderson
リリースされたばかり。
トロンボーン奏者クリフトン・アンダーソンのシングルです。
この曲では、残念ながら海野さんは演奏していないようなんですが、12月にリリースされる同名アルバムでは海野さんの演奏が聴けるようです。
この曲があまりにすばらしく、アルバムのコンセプトを想像しやすいと思ったので、ご紹介します。
歌っているのはアンディ・ベイ。
1939年生まれ、ホレス・シルバーとも共演歴のある80歳のジャズ・ヴォーカリスト。
黒人差別の歴史を生きてきた彼の、説得力に溢れた歌声に感動します。
イントロがピーター・バーンスタインのギターとクリフトンのトロンボーンとのデュオなんです。
それはロマンティックでうっとりします。
海野さんのピアノが聴ける、12月のアルバムリリースが楽しみすぎます。
海野さんの1日も早い回復を祈って彼の曲を聴こう
海野さんを襲った人の目的は分かりませんが、根底になんらかの差別意識があったのではと推測します。
音楽を通して人とつながることを何よりも大切にしてきた海野さんが、このような襲撃にあってしまったことを本当に残念に思います。
世界中の人々からその演奏を称えられるようになっても、ものすごくきさくで、いつも穏やかな海野さん。
魔法のように高度な技術を駆使しながら、気負いやてらいがみじんも感じられず、常に澄んだ深い音色をまっすぐに届けてくれていました。
海野さんがまた、心から楽しんでピアノを弾けるようになりますようにと、祈らずにはいられません。
あっ、そうそう、海野さんのCDを買って海野さんを支援したい方は、"Jouneyer" がオススメです。
Tadataka Unnno “Jouneyer"で、購入方法もご紹介しております。
NY移住前の海野さんが、サイドマンとして参加したアルバムもすばらしいです。
For You featuring Tadataka Unno・鈴木良雄トリオ!これぞジャズ
で、もっともっと海野さんのことが知りたいと思われた方は、海野雅威の情報集結!ライブ・アルバム・お宝動画・逸話等一覧!試聴付へどうぞ。
最後までおつきあいいただき、ありがとうございました。
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