ロイ・ハーグローヴ・クインテットの海野雅威!BN東京|ゴニョ研

2018年3月2日ジャズおすすめ

本当に悲しいことですが2018年11月2日、ロイ・ハーグローヴは心不全で亡くなってしまいました。
ロイの病気について、あまり詳しいことは発表されていないようです。
以前から腎障害があり、透析を受けていたということくらいしか分かりません。

私が2018年3月にロイ・ハーグローブの公演をブルーノートで聴いたとき、1stではソロが短めだったり足元もちょっとふらついたり、体調の悪さをうかがわせる様子はありました。
でも2nd ではずいぶん元気そうでバリバリに長いソロも吹いていました。

1ファンに過ぎない私には、詳しい病状は分かりませんが、きっと比較的長い間、闘病生活をおくりつつ音楽活動をされていたのだろうと推測します。

透析を受けつつ世界中をツアーして、ほぼ毎晩1時間以上のステージを2回もこなすというだけで信じがたいことです。

心からお疲れさまでしたと言いたい気持ちです。

ロイの音楽の功績をたたえ、追悼の意を込めて、追悼・ロイ・ハーグローヴの名演名盤を聴こう!という記事を書いています。
よろしかったらご一読を。

海野雅威がロイと東京ブルーノートにやってきた!2018年3月

2018年3月1日、ロイ・ハーグローヴ・クインテット、ブルーノート東京公演に行ってきました。名古屋から1泊遠征の甲斐あって、これまでのライヴで一番かっていうくらい興奮し感動しました。

初めて、1st、2nd ともに参戦。両方とも満席でした。
1st の私の席は前から2列目で、左のスピーカーの前。
こんな風にステージが見える席。
自由席の予約番号24番だったので受付時間に行って予約番号順に入場して好きな席を取りました。

  • Roy Hargrove :フリューゲルホルン,トランペット
  • Justin Robinson:アルトサクソフォーン
  • Tadataka Unno:ピアノ
  • Ameen Saleem:ベース
  • Quincy Phillips:ドラムス

1st ステージ最後の曲では海野雅威が…。涙物!

さあ、1st の始まり。
ロイはエンジっぽい赤と黒のチェックのスーツに、
同じような赤い色のシャツとタイ、
そしてスニーカーも赤に白のラインのadidas。
なんておしゃれ。
でも歩く姿がちょっとフラフラ。

ロイはテーマを吹くと

「お前たち、よろしくやっといてね」

って感じで、ドラムの後ろに回って見てる。

ソロも取るけど、
フレーズは短くて速いフレーズはない。
おまけに時々音がかすれたりして、
数年前に見た時と全然違う。
体調不良説が頭をよぎる。
ロイ特有の張りがあって色っぽい音が出ていない。

一方、バンドの面々は、
そんなロイをカバーして、余りある演奏。
海野さんはアグレッシブで1曲目からノリノリ。
ソロ1コーラス目からそんなに弾くのかっていう速弾き。
惜しむことなく、どんどんフレーズを繰り出す。
私は顎が何回はずれたか…。

クインシーは、この店で出してる
クルンクルンのスウィンギングポテトみたいな
シンバルを据えたシンプルなセットの中に座って、

マシンのような安定したドラミング。
しかし、どんなに典型的なリズムにも、
彼独自のアイデアが光る魅力的なパターンを叩いている。
そして、お米じゃなくて、リズムの粒がたっている。

アミーンは、骨太なんて常とう句では到底足りない、
深くクリアでしみわたる音。
躍動感あふれるベースライン。
そりゃ、こんなリズム隊がいたら、鼓舞されまくりですわ。

メンバー全員、恐ろしく反応が早い。

このバンド、本当に演奏曲が事前に決まってない。
1曲終わると、「次の曲なに、なに?」と、みんなロイに注目。
ロイは鼻歌を歌いながらカウントを出したり、
頭のフレーズを吹いたりして、次の曲が始まる。

サックスのジャスティンはだいたい、
ステージに近い客席に座ってて、
「そろそろかな」って時に
のそのそやってきて、
いきなりチャーリー・パーカーみたいに吹きまくる。

後半にはロイのトランペットに彼らしい音が戻ってきた
マイケル・ジャクソンの”Rock With You” 、

サム・クックの "Soothe Me” では
ロイの粋なヴォーカルをアップテンポで。
会場の手拍子も絶好調。
この曲、本当に楽しい。

最後の曲での退場のしかたがおしゃれ。
ジャスティンとロイが吹きながら会場を回って消える。
ステージの3人はピアノトリオで演奏を続け、
次にベースのアミーンが去る。
しばらくピアノとドラムで演奏し、
クィンシーが去る。

最後にステージで海野さんが一人、
ずいぶん長い間、圧巻のソロを聴かせた。
情熱的な演奏で溢れだすリズムに
思わず会場から手拍子が始まる。
海野さんがピアニッシモになると手拍子もピアニッシモ。

会場がひとつになった素敵な合奏に熱いものがこみあげる。

ここは海野さんの生まれ故郷。

2nd はロイが本領発揮!ノンストップの熱演に狂喜乱舞

2nd は予定よりちょっと遅れ、9時10分くらいに始まった。
私の席は1stより少し後ろ。
でも高さがあるのでステージは良く見えた。

ロイは1stはリハだったのかと思わせる、
それは伸びのある熱い音を響かせる。
ソロでの早いフレーズの切れ味も最高。
無駄は一切なくて新鮮。これぞロイ!!
1stしか聴かなかったお客さんがちょっと気の毒。

海野さんは、変わらず全力投球。
ソロではお得意の
違う曲のテーマのフレーズ入れちゃう作戦が炸裂し、
ピンクパンサーのテーマが飛び出して会場は大喜び。

本当に海野さんはアドリブで聴衆を喜ばすのが得意。
きっと、ロイもそんなとこを気に入ってるんだろう。
今でもニューヨークの小さなクラブのセッションに出るロイ。
昨年のインタビュー記事をご紹介しよう。

ジャム・セッションにも出掛けるしね。必ず、午前4時までジャムってるな。今回、オレと一緒に来ているピアニストは日本人だろ? 海野雅威というんだが、彼に会ったのもそうしたクラブでのジャム・セッションで、だったんだ。彼はハンク・ジョーンズに習った男で、そうした雰囲気が実に良く出てるだろ? 素晴らしいピアニストだよ。

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さて、ブルーノート東京に戻ろう。

ロイがスタンダード ”Never Let Me Go” を
フリューゲルで吹き、後半では歌う。
研ぎ澄まされたトランペットとは、また違う味のある歌唱。

曲と曲の間を惜しむかのように、
MCもせず、次々と演奏し、
そのたびに繰り返される圧倒的なソロ。
フレーズの洪水に恍惚とする。

おまけに、このメンバーたち、
まるで1回1回が実験であるかのように、
手を変え品を変え斬新なバッキングを聴かせてくれる。

ロイを始め、つわものぞろいのこのバンドで、
演奏し続けるのはさぞかしキツイだろう。

1stの初めからベースのアミーンの表情が硬くて、
どうしたのかなと思っていたら、
2ndの半ばに彼のそれは長いソロがあった。
クリアでパーカッシブな彼の音はソロではさらに表情豊かで、
高音でも全く音量が下がらない。
なんとドラマチックなベースソロなんだろう。

そのあとはアミーンが軟らかな笑顔になる。
ソロと彼の表情に関係があるかどうかわからないけれど。

2 nd では、クインシーのソロもすさまじかった。
驚異的な音数だが、ゆるぎない表現力。
タイトな中に歌心もある。
他の誰とも違う。

この、世界のどこへ行っても
リーダーとして絶賛されるであろうメンバーが、
ロイのバンドとして集まっていることが奇跡だ。

興奮している間に、ロイが深々とお辞儀をする。
メンバーもそろってお辞儀をして、
みんなで電車ごっこのように立ち去っていく。

アンコールの拍手が鳴りやまないうちに会場が明るくなった。
2 nd は1時間半。私はずっと興奮しっぱなしでした。

大好きな音楽家なら2回公演は2回とも聴くのが正解!!

初めて2回公演をとおして聴いたけれど、
本当に好きな音楽家の時は、
次もこうしようと心に決めました。

まあ、私、無収入なんで、たまにね。

2回のステージで、演奏曲目も違い、、
メンバーの調子も違い、お客さんのノリも違うから、
「2回目」とは思えないくらい新鮮で楽しい。

素晴らしい一夜をありがとう。
ロイの健康が心配。
神様、ロイをお守りください。

やっぱり音楽が大好きです。

というわけで、この後私は、憧れの海野さんと握手をし、お話しし、一緒に写真を撮りました。私の東京への珍道中と、海野様との会話は
次回のブログで書きたいと思います。

*アイキャッチ画像および記事中のロイ・ハーブローグの写真は、ブルーノート東京公演のフライヤーを、許可を得て掲載させていただきました。

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