海野雅威 ”As Time Goes By” 美しい音にひたる幸せ!|ゴニョ研

2018年2月28日ジャズおすすめ

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海野雅威がハンクに捧げた “As Times Goes By"

これは、"Peekaboo!"、"MY ROMANCE" に続く、
海野雅威3作目のリーダーアルバム。
2008年に渡米し、あのハンク・ジョーンズと親交を深め、
時には何時間も一緒にピアノを弾きました。
このアルバムの録音された2010年にハンクは、
91歳の生涯を閉じました。
ライナーノーツに児山紀芳さんが引いている、
海野さんのメールの文章です。

ハンクが亡くなる時に、その最期に立ち会いました。その場に居たにも関わらず、今でも亡くなった事が信じられないぐらいです。とても悲しい出来事でした。このアルバムは4月に録音して、ハンクは5月に旅立ちました。ハンクとの思い出、そして敬愛するハンクにこのアルバムを捧げたいと思います。"As Time Goes By" というタイトルにも形ではなく本当に大切なものという意味を込めています。

児山さんによれば、"As Time Goes By"の歌詞の大意は

「どんなに時代が変わっても、人生で真に大切なことはただ一つ、決して揺るぐことはない…」

というものなのだそうです。

メンバー全員のジャズを愛する心が伝わるアルバム

  1. Round Midnight~I Have Dreamed
  2. How High The Moon
  3. Birdbase
  4. Trouble Ain’t Always Bad
  5. My Boat For You
  6. Gone With The Wind
  7. Little Girl Blue
  8. In The Blue Moment
  9. If I Were A Bell
  10. As Time Goes By
  11. Drop Me Off In Harlem
  • Tadataka Unno:piano
  • Hassaan J.J.Shakur:bass
  • Jimmy Cobb:drums
  • Frank Wess:flute(on track6),tenor saxophone(on track10)

海野雅威がハンクに捧げた “As Times Goes By"

アルバムジャケットの写真

1.Round Midnight~I Have Dreamed

1曲目はソロ。
セロニアス・モンクの名曲"Round Midnight" が、
いつのまにか
「王様と私」の中のリチャード・ロジャース作曲の美しい曲、
“I Have Dreamed" になります。
なんてしゃれた、そして考えつくされたアレンジなんでしょう?
こういう所が海野雅威の大きな魅力の一つなのだと思います。

2.How High The Moon

御大Jimmy Cobb の華麗なドラミングが聴きどころ。
録音時81歳です。ソロも力強くて躍動感にあふれています。
私は料理が大好きなので毎日お世話になっています。
どちらも本当にいい味をだしていますね。
昆布のイラスト

3.Birdbase

海野さんのオリジナル。ボサノバが心地よくて癒されます。
Shakur のベースソロが歌うようです。

4.Trouble Ain’t Always Bad

海野さんのオリジナルです。軽快な4ビートで、疾走感あふれる曲なのに、
ちょっとユーモラスな感じがするのがおもしろい。
“Trouble Ain’t Always Bad"
(トラブルがいつも悪いこととは限らない)
というタイトルが曲にぴったり。
トラブルメーカーの私のために作ってくださったのでしょうか。

5.My Boat For You

沢田研二が歌ったヒット曲「君をのせて」。宮川 泰作曲です。
この曲が、こんなに深く優しく美しい曲だと、私は初めて知りました。
びっくりするくらいジャズなんですよね。
でも、海野さんは、オリジナルをとっても大切にしていて、「ジャズにしようとして頑張ってアレンジしました」なんていうのが、まるでない。
大切な人のために大好きな曲を弾いた、そんな演奏なんです。
また、ベースラインがムチャクチャ素敵ですよ。
シンプルなメロディで細かい音符は少ない。
だから音の間を埋めるベースのフィルインが、ものすごくしゃれたエッセンスになってます。

6.Gone With The Wind

6曲目では、Frank Wess の温かみのフルートが聴きどころ。
この人もジャズ・フルートの巨匠というべき人。
この時80代後半なんて、とても信じられない美しい音です。
フルートのイラスト

7.Little Girl Blue

この曲は海野さんのお気に入りなのか、2016年リリースのアルバム“DANRO"にも収録されていますし、NY の Smalls でのライブでも演奏されていました。切ないメロディをていねいに演奏していて心を打たれます。

8.In The Blue Moment

ワルツ。美しいメロディのオリジナル曲です。

9.If I Were A Bell

マイルスのアルバム"Relaxin’ with the Miles Davis Quintet"での演奏が有名な曲。
いろんなスタンダードのフレーズを引用するのは
海野さんのお得意だけれど、この曲は特にいっぱい。
それもしゃれている。
アドリブの後のテーマでは Shakur のベースでのフィルインが最高!
ジャズって楽しい!!

10.As Time Goes By

タイトル曲ですね。Frank Wess のテナーが心にしみます。デュオです。

11.Drop Me Off In Harlem

エリントン作曲の軽快なスウィング。
ベースとのデュオ。Shakurとの息がぴったり。
このベーシスト、
私はモンティ・アレキサンダー・トリオのライブ動画で見たのですが、
安定感抜群!
でもソロはメロディアスでユーモラス。
ものすごく楽しそうに弾きます。
アドリブで他の曲のフレーズを多用するところが海野さんとそっくり。

これ、ライナーノーツによれば、ほとんど1テイクで修正していないのだそうです。
信じられない完成度です。全員達人。

こんなに気持ちのいいジャズあっていいのか?!

ジャズ、大好きなんですが、
私、わかるものとわからないものがあるらしい。
だから、有名な音楽家のもので評論家が勧めているCDを買っても、よく失敗します。
基本的に親しみやすいものが好きです。
でも、親しみやすいだけではだめなのです。
音楽的な技術は最高であってほしい。
深みや温かみがあって、押しつけがましくないのがいい。

これは、そんな私のために作ってくれたようなアルバム。
1日中聴いていても、ちっとも疲れない。
疲れた時にこそ聴きたい一枚。
あんまりないですよね。ジャズでは。

では。

海野雅威のリーダーアルバムの全て、参加アルバムの一部はご紹介記事を書いております。
アルバム一覧はこちらの記事にあります。

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