初ジャズ大歓迎!!The Oscar Peterson Trio “We get requests” |ゴニョ研

2017年12月27日ジャズおすすめ

常にメロディアスな Peterson のピアノであなたも是非ジャズ部へ

こんにちは ガッツかよめです。

今回は、初めてジャズを聴く方にこれ以上ピッタリなものはないくらい、ピッタリなアルバムです。というのも、私がこのアルバムでジャズのトリコになったからです。もう30年くらい前ですが、私はフュージョンは好きだけど、典型的なジャズがあまり好きではありませんでした。何枚かジャズのCDを買ってはみたものの、いつも数秒聴いてみて2度と聴くことがない状態でした。ところが、ある日、妖怪、いや夫が「これ聴いてみなよ」とこのアルバムを買ってきました。

聴いてみて、本当にびっくりしました。とてもわかりやすくて楽しい!!
それでいて美しくてなんと表現力豊かなことか!
アップテンポの曲はノリノリに、バラードの曲はしっとりと。
アルバムの構成も見事で1枚を飽きることなく聴けるのです。

なんといっても、それまでに聴いていたジャズのように
「はあ~~~~? なにやっとんの?! もうわけわからん」

怒る女性のイラスト

と叫びたくなることが、全くないのです。いや、叫びたくなっても、ここまで怒ったりはしないんですけどね。

オスカー・ピーターソンの演奏には、実験的な試みとか、常に新しいアプローチを求める、というような斬新さはないですが、圧倒的なテクニックの高さと最高のセンスと深い歌心で、聴く人をトリコにするのです。

まあ、ちょっと1曲目を聴いてみてください。

(試聴提供:iTunes)

1曲目 “Quiet Night Quiet Stars (Corcovado:コルコヴァード) ”

ブラジルの作曲家、ボサノバの創始者の1人である、アントニオ・カルロス・ジョビンの作曲です。7曲目の“イパネマの娘”も作曲者は同じ。この曲、軽快なリズムに乗って踊り出したくなります。

こんなに早いテンポなのに、ほとんど休みなく、トタン屋根を打つ雨音のように、全くブレなく規則的に明確にどんどん音符が繰り出されてくるのに驚きます。

比較的高い音域で、細かい音をたくさん弾く彼の奏法を「ピラピラ弾き」なんていう人もいるけれど、彼のフレーズは、音数を増やして隙間を埋めるためのものではないのです。どんなに細かい音符の多い早いフレーズでも、無機質になることはなく、ちゃんと歌心があふれているんですよね。フレーズがメロディアスであることにかけては、彼の右に出る人はいないと思います。そして、ジャズのピアニストは超絶技巧の人が多いけれど、技術の高さではオスカー・ピーターソンは断トツで、全くミスタッチもなく、リズムの乱れもなく、アドリブのフレーズに詰まることもない。

超絶技巧と深い歌心!語り継がれるジャズピアニスト Oscar Peterson

オスカー・ピーターソンは1925年にカナダで生まれ、幼少期からピアノとトランペットを学び、7歳で結核になってトランペットを断念しピアノに専念したそうです。十代からプロとして演奏を始め1949年にアメリカデビューを果たし、2007年に亡くなるまでに200枚以上のアルバムを制作して、「名盤」も数多く残しています。日本が世界に誇り、ジャズでもクラッシックでも高い評価を得ているピアニスト小曽根真をはじめとして、オスカー・ピーターソンに強く憧れ、かつ影響を受けたジャズピアニストは数多く、ピーターソンは、これからどんなに時がたとうと、必ず聴きつがれるピアニストです。

2曲目 “Days Of Wine And Roses (酒とバラの日々)”

1962年の同じタイトルの映画の曲で、ジャズのスタンダードとしては非常に人気のある曲です。作曲はヘンリー・マンシー二。原曲ではオーケストラをバックに合唱されます。メロディもハーモニーも大変美しい曲です。

(試聴提供:iTunes)

でも、私はこのオスカー・ピーターソンの軽快なアレンジが大好きです。試聴は、1コーラス目の最後から始まっています。ブレイク(リズムセクションの演奏の中断)があって、ピアノだけのフレーズ、これがアドリブの始まりで、こんなアドリブの始まりの部分のことをピックアップと言いますが、このピックアップの素晴らしいこと。かっこよすぎて息が止まります。

これの前のテーマの部分は、2ビートといって、ベースは1小節の1拍目と3拍目に弾くパターンを基本としています。で、ベースがメロディの隙間にしゃれたフィルインを入れています。そしてピアノのアドリブの部分のベースは1小節に4拍、つまり4ビートになって力強いビートを刻みます。ベースのレイ・ブラウンは、15年以上もベーシストとしてピーターソンを支え、演奏家としても教育者としても尊敬される人です。ピーターソンがノリノリで演奏できるのは、この人のベースが素晴らしいことにも大いに関係があると私は思います。

3曲目 “My One And Only Love (マイワン・アンド・オンリーラブ)”

1960年代に書かれた流行歌なのだそうですが、ジャズバラードのスタンダードとして多くの演奏があります。試聴で聴けないのがとても残念ですが、この曲はピーターソンのピアノソロから始まります。原曲のメロディーを大きく崩すことなく弾いているのですが、リハーモナイズ(ハーモニーを変えること)や随所に入れられるフィルインが、実に魅力的です。ここでも彼のピアノは非常に饒舌(じょうぜつ)で、テンポを自由に揺らしながら、まるで寄せては返す波のように、静かにひいて行ったかと思うと、強い勢いで寄せてきて、思わず胸が高鳴ります。エンディングも再びピアノソロです。低音から高音までピアノの鍵盤をフルに使ったダイナミックな演奏なのに、どんなに短い音も濁ることなく美しく響いているのが驚異的です。

4曲目 “People(ピープル)”

(試聴提供:iTunes)

1964年にブロードウェーで初演されたミュージカル “ファニ・ガール”で歌われて大ヒットし、主演のバーブラ・ストライザンドを一躍トップスターにした曲です。原曲はこれぞミュージカル! という感じ。バーブラの歌唱力は圧倒的で壮大な世界を作り上げていて、彼女の舞台を見たくなります。

一方、オスカーピーターソンは、ミディアムテンポのスウィングで軽快に演奏され、とてもしゃれたアレンジです。こちらも素敵ですね。

5曲目 “Have You Met Miss Jones?  (ジョーンズ嬢に会ったかい?)”

これもミュージカルの中の曲ですが、ジャズのスタンダードになっています。ここではピーターソンのピアノは全く速弾きをせず、メロディのひとつひとつの音、すべてに丁寧に和音を積み重ねて重厚な雰囲気を醸し出しています。この曲はアドリブもなしですが、十分に聴きごたえのある演奏になっています。

6曲目 “You Look Good To Me”

レイ・ブラウンの弓弾きと静かなピアノでの優しい印象のイントロの後、指弾きのベースが主体になりピアノがバッキングをして、その後またメロディをピアノに交代します。コロッと変わって、ピラピラ弾き全開。いや、私はこのピーターソンも大好きですよ。

“イパネマの娘”|けだるい本場のボサノバ VS ジャズの激しいボサノバ

7曲目 “The Girl From Ipanema(イパネマの娘)”

ボサノバと言えばこの曲。誰でも1度は耳にしたことがあるのではないかと思います。アントニオ・カルロス・ジョビンの作曲。ジョビンの曲はみなハーモニーがとても洗練されていて、メロディも親しみやすく、多くのジャズミュージシャンに愛され、ジョビンの曲ばかりを集めたアルバムを作るジャズミュージシャンも多くいます。

原曲は、これも名盤といわれるアルバムに入っています。ボサノバの創設者の1人で、本場ブラジルの歌手兼ギタリスト、ジョアン・ジルベルトと、ジャズのサックス奏者スタン・ゲッツの共同名義のアルバムで、その名も “Getz/Gilberto(ゲッツ/ジルベルト)”。ハンモックに横たわって昼寝するのにピッタリな、ゆるゆるっとした感じのノリです。そうそう、カフェのBGM。ピアノを弾いているのは作曲者のジョビンです。この曲はシングルカットされ、そのシングルもこのアルバムも記録的なヒットを遂げ、アメリカにボサノバブームが巻き起こります。ゲッツはボサノバを全世界に広め、ジャズのレパートリーにした立役者として高く評価されています。

(試聴提供:iTunes)

さて、ピーターソンのイパネマ。彼に限らず、ジャズのボサノバはだいたい激しいノリで全く眠くなりません。ここでは、強力にビートを保持しながらも、手を変え品を変えグッとくるフィルインをかましてくるレイ・ブラウンに脱帽です。そして、とぎれなく繰り出されてくるピーターソンのアドリブ。アドリブの中の休符の長さを合算してみたら、おそらく彼が断トツで一番短いと思います。私はパチンコをやりませんが、「出る台」みたい? 美味しいフレーズがどんどん出てきて笑っちゃうみたいな。ちがうかなあ?

また、アドリブは「どんなフレーズを演奏するか」が注目されがちですが、「どのように演奏するか」も重要ですよね。ピーターソンのアドリブの凄さはこの「どのように」が全くおざなりにされないことだと思うのです。強弱、切るのかつなげるのか、どこにアクセントをつけるのか、細部の表現にまで意識が行き届いています。

“D.& E.”|ピアノ・ベース・ドラム三位一体のブルース

8曲目 “D.& E.”

1950年代以降のジャズに、革新的な変化をもたらしたジャズグループ、MJQ(モダンジャズカルテット)の代表曲のひとつ。その革新的な変化とは、一人のアドリブの名手とそのバックバンドという、当時の典型的なバンド形態ではなく、グループとしての表現を重要視することや、クラッシック的な要素を取り入れることなどです。ピーターソンはMJQに多大な影響を受けていました。MJQはビブラフォンのミルト・ジャクソン、ピアノのジョン・ルイスが中心になって1951年にミルト・ジャクソン・カルテットとして結成されたのですが、実は初期に一員としてベースを弾いていたのが、レイ・ブラウンです。

この曲はブルース進行という単純なコード進行で、テーマはたった12小節ですが、ピーターソンは、見事に盛り上げて聴きごたえのある超大作に仕上げています。思わせぶりなピアノの旋律と粋なベースの合の手から始まります。

アドリブの最初は2ビート。ぼちぼちやっている感じ。
それが4ビートになって徐々に盛り上がってくると、
その後はピアノは単旋律(和音ではなくひとつの音)をほとんど弾かず、
和音の連打でドラムとの掛け合いになり、
うわ~~~ノリノリ~~ッ絶好調!!ってなった後、
ストンとまた静かになりテーマに戻ると、
「ああ、こういう曲だったね」とテーマを思い出します。
あっぱれ!!

試聴はアドリブの頭から始まっています。ドラム、ベース、ピアノのコンビネーションが、最高のグルーブ感を出しています。MJQに敬意を表すピーターソンの心意気が伝わるようです。

9曲目 “Time And Again(タイム・アンド・アゲイン)”

この曲はスタッフ・スミスというジャズバイオリニストの作曲。メロディーもハーモニーもうっとりするような美しい曲。ピーターソンはいつもの装飾音符をかなり抑制して、大切に弾いています。心に響くレイブラウンの弓弾きで始まるエンディングもとても素晴らしく、ピアノの音色の美しさにも心を奪われます。

10曲目 “Goodbye J.D.(グッドバイ J.D.)”

この曲は長年ピーターソンをプロデュースしたジム・デヴィスへの感謝をこめて、移籍に際してピーターソンが作った曲です。ピアノ・ベース・ドラムが三位一体となった疾走感あふれる曲。だいたい、このテンポを保って演奏するというだけでも、もう至難の技。全くぶれない鉄壁のドラムはエド・シグペン。どうやって叩いてんのかと不思議です。

「リクエストをどうぞ」のバンドは技量の大きさが違う!!

前に何かでレイ・ブラウンがオスカー・ピーターソンについて語っていたことを思い出します。ピーターソンは、リハーサルで曲のテンポやキーを打ち合わせるけれど、本番では全く違うテンポやキーで演奏し始めることが多いと。だいたい、ジャズのスタンダードなんて、1曲の中に何か所も部分的に転調しているところがあって、コードがコロッコロ変わるので、1つのキーで演奏できたら違うキーでも簡単という代物ではありません。ピーターソントリオの技術の高さを垣間見ることができる、この逸話が私はとても好きです。

そして、ピーターソンは、このアルバムのタイトル( We get requests:リクエストうけますよ)にもあるように、客席からリクエストを受けるのが好きだったようです。リクエストに応えて、「あいよ」っと演奏し始めることができるなんて素晴らしすぎです。何度聴いても曲名が覚えられず、何度も練習してもメロディーを覚えるのもやっとで、コード進行がてんで覚えられない私としては、神様のように思えます。

最後にもう一つだけ、このアルバムから時々、虫の羽音のよう、うめき声のような、得体のしれない雑音が聞こえます。これ、ピーターソンが弾きながら出す声です。ピーターソンは歌の録音もあるし、歌が下手なわけではないんですけど…。ジャズミュージシャンは、こういう声を出す人、多いんです。芸術家肌の偉大なジャズ・ピアニスト、キース・ジャレットの曲を聴いたときは私は、恐竜の鳴き声が入れてあるのかと思いました。聴き慣れないと、かなり気になります。聴き慣れると、これもまたオツと思えます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
私の心の友、ジャズ。私の拙文でみなさんに、ちょっとでも興味を持っていただけたら、そして、ほんの少しでも皆さんの音楽ライフのお役にたてたら幸いです。

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