海野雅威 2019年日本公演ライブレポート|ゴニョ研
2019年10月、待ちに待った海野雅威(うんの・ただたか)さんの来日公演を聴きに行きました。
公演は7日間、名古屋、飛騨、富山が各1日、東京4日間。
私は、日本公演初日の名古屋での Tadataka Unno Reuinon Trio と、東京でのソロを聴きました。
昨年の海野さんの来日でも、海野雅威リユニオン・トリオ!2018 BODY&SOUL ライブレポートを書きました。
海野さんの素晴らしい演奏を、私の筆力では十分にお伝えできないと、昨年にも増して思う私です。
でも、海野さんの演奏を聴けなかったたくさんの方に、会場の雰囲気だけでもお伝えできればとも思います。
なので、今回はさらっと私の感想中心に書きます。
そうそう、最初の写真を含め、今回使わせていただいている写真は全て、伊藤 純治さんの撮影です。
トリオの演奏が聴こえてくるような写真です。
チケットは即完売! 超満員のリユニオン・トリオ名古屋公演
約1年ぶりの日本公演は、全く宣伝されていなかったにも関わらず、名古屋も東京もほぼ予約開始と同時に完売。
中には2時間電話をかけ続け、通じた時には売り切れだった方もいらっしゃるとか。
案の定、名古屋のライブハウス “THE WIZ" は超満員で、私は身をかがめ首を曲げ、たくさんの頭の隙間から必死で海野さんを見つめていました。
曲はほとんど全て海野さんのソロから始まりました。
しばらく曲名が分からないまま聴き惚れていると、「ああ、あの曲」と分かる聴き慣れたフレーズが聴こえてくる、程なく、ベースとドラムが加わる…。
「あの曲、あの曲!」と安心したのもつかの間、テンポが変わり、リズムが変わり、転調を繰り返し、時には違う曲になったり…。
演奏曲は、海野さんの18番で、ちょっと切ない “Little Girl Blue" や、踊りだしたくなるようなスウィングの “Drop Me Off In Harlem"、沢田研二のヒット曲 “My Boat For You(君をのせて)"、"Jubilation"、アップテンポのボサノバになって最高だった “Waltz for Debby" など。
中でも、"Jubilation" は、深いグルーヴで迫力満点な演奏。
海野さんがアメリカで録音したリーダーアルバム “My Romance ~ The first sketch of Tadataka Unno” の中に収録されている、ジュニア・マンス作曲の名曲。
海野さんは、このアルバムで共演したジミー・コブが、この曲を、キャノンボール・アダレイと何度も演奏していたことを知っていて、収録曲に入れたとおっしゃっていました。
このアルバムの制作後、アメリカへ移住した海野さんはジミー・コブ・トリオのピアニストとなり、このトリオでヴィレッジ・ヴァンガードで公演し絶賛されたのですよね。
そんなことを思い出して、その出来事に爪のアカほども関与していないのに、私は一人、目頭が熱くなっていました。
この日のライブで、中盤くらいでしょうか、突然海野さんが、
「では、次の曲は吉田豊のベースをフューチャーして…なんか、どうぞ」
と吉田さんを見るのです。
「なんか」ですよ、「なんか」。
そんな曲紹介を聞くのは初めてです。
すると、吉田さんが、
「えっ?」
と絶句。
しばらく間が空いて、とても重厚な奥深いベースソロから曲が始まりました。
昨年のライブ同様、この日も、本当に演奏曲目さえ決まっていなかったんだなあと、改めて私は衝撃を受けました。
そういえば、昨年にも増して、吉田さんは、海野さんの演奏に耳をそばだて、時に鍵盤を凝視し、自らの音を確認するように演奏されていました。
リズムも、テンポも、キーも、曲さえも、いつどう変わるか分からない演奏は、共演者には聴く人の何倍もスリリングであったことでしょう。
でも、この日も、トリオの演奏は目が飛び出すほど息ぴったり。
時にジェットコースターのような海野さんの演奏に、ベースもドラムもぴったり寄り添って、この3人でしか表現し得ない、素晴らしい音の世界を繰り広げていたのでした。
ピアノソロ・@御茶ノ水NARU
さて、東京でのソロも、
「全く(事前に)何も考えてないんで、途中で頭真っ白になるかもしれません」
という海野さんの挨拶から始まりました。
この日の演奏曲は、"ニューヨークの秋"、リクエストを受けて “My Boat For You"、"In the Wee Small Hours of the Morning"、海野さんのオリジナル “In The Blue Moment" などが次々に演奏され、アンコールはメドレーで、"Amazing Grace ~ For All We Know" でした。
海野さんの演奏は、ジャズのスタンダードをモチーフにした即興演奏。
テーマ、アドリブ、再度テーマ、というジャズの形式に一応従った曲もあるけれど、ほとんど展開が自由奔放なのです。
ブルースの奥深さ、スウィングの小気味良さ、しばしばユーモラスに差しはさまれるお馴染みのフレーズ。
ジャズの伝統的奏法が散りばめられているのに、その演奏は斬新で、全くパターン化されていない。
「ジャズのスタンダードの演奏」の概念を越えた、それは唯一無二の「海野雅威の演奏スタイル」そのもの。
オリジナルをリスペクトしながらも、演奏し始めた瞬間からもう、どのスタンダードも海野さん自身の曲のようです。
目をつぶって音に浸っていると、いつの間にか私は山の頂きで遠い星を眺めていたり、風の渡る草原に佇んでいたり、都会の雑踏にもまれていたり…。
まあ、それも完全には否定できませんが。
ピアノという楽器は、こんなにも表現力豊かで能弁だったのかと、海野さんのライブでは毎度、驚かされます。
海野さん自身は、
「メンバー紹介させていただきます、ピアノは河合くんです」
なんて言ってましたが。
というわけで、みなさん、最後までお付き合い、ありがとうございました。
海野雅威・次回来日は、なんとあの新進気鋭の歌姫と!
あっ、最後に、海野さんから素晴らしいお知らせがありました。
次の海野さんの来日は、2019年12月5、6、7日、コットンクラブ。
なんと、28歳にしてグラミーにノミネートされた経歴も持つ、注目のジャズシンガー、ジャズメイア・ホーンと一緒に来日です!
コットンクラブの公演詳細ページでは、共演メンバーは未定となっていますが、海野さんがライブでおっしゃっていましたので、確実でしょう。
海野さん、現在もジャズメイアさんとツアー中です。
残念ながらご紹介するアルバムのピアニストは海野さんではないんですが、このアルバム、とっても聴き応えがあります。ぜひ聴いてみてくださいね。
ちなみに、私、海野さんの遠距離ストーカーなので、情報収集に抜かりはありません!!
海野雅威の情報集結!ライブ・アルバム・お宝動画・逸話等一覧!試聴付
最後になりましたが、うっとりするほど素晴らしい写真の使用を快諾してくださった伊藤 純治さんに深謝いたします。
本当にありがとうございました。
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