海野雅威リユニオン・トリオ!2018 BODY&SOUL ライブレポート|ゴニョ研

2018年11月20日ジャズおすすめ

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海野雅威トリオが復活!BODYandSOULでのライブ

ライブの看板の写真

2018年11月19日月曜日、南青山 BODYandSOUL で、 海野雅威リユニオン・トリオのライブが行われました。

10年前に活動拠点をNYに移された海野雅威さん。
今年の3月にはロイ・ハーグローヴ・クインテットのピアニストとして来日して息がとまるほど素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
日本でのリーダーライブは2016年の James Cammackさんや吉田豊さん(ともにベース)とのデュオライブ以来。

ファンにとっては、キリンかろくろ首になるくらい、待ちに待ったライブでした。
でも、たった1日きり。
発売翌日には満席になってしまったとか。

そして、この海野雅威リユニオン・トリオは、2004年に録音された、海野さんのデビューアルバム”Pee Ka Boo!”の時のトリオ。

海野 雅威(うんの ただたか):piano
吉田 豊(よしだ ゆたか):bass
海野 俊輔(うみの しゅんすけ):drum

このトリオは、同じ年に横浜ジャズ・プロムナード・コンペティションでグランプリ及び市民賞を受賞しています(このコンペティションの賞金は1円単位まできっちり3等分したそうです)。

超満員で立ち見続出のライブ

ちょっと冷たい雨が降る中、開演時間の45分前、7時15分くらいにボディアンドソウルに入ると、もうかなり席は埋まっていました。もちろん座っている方は運よく席の取れた方。
そして、立ち見覚悟でいらっしゃったお客さんでしょうか?
入り口付近に立っておられる方多数…。
私も、もし2,3日海野さんの FaceBook をチェックしない日が続いていたら、あそこに立っていたはず。
そう思いながら案内された席に着いたら、なんとピアノの真ん前!!
残念ながら鍵盤は見えませんでしたが、手を伸ばすとピアノの一番高い音が弾けそう。

お客さんは、20代と思しき方から、かなりグレイヘアの方まで年齢層は幅広く、古くからのファンと思われる方々も多数。

息ピッタリのトリオの熱気あふれるライブ

1部は「枯葉」や「ワルツ・フォー・デビー」、おなじみの曲揃い

2曲目は「ニューヨークの秋」。とってもしっとりとしたバラードで海野さんのソロで始まり、その後スィング。
なんと小気味いいんでしょうか。
ダイナミックで深いグルーヴなのに、とっても軽快な演奏に聴きほれていたらエンディング。
もう終わっちゃうのか、残念だなあと思ったら、終わらず、手品のように滑らかに始まったのは、なんと「枯葉」
アップテンポで最高にノリノリ。
ベースソロもドラムソロもノリノリでした。

5曲目がアイラとジョージ、ガーシュイン兄弟の “They All Lauphed"
踊りたくなるようなアップテンポの楽しい曲。
テーマを聴いているだけでもウキウキしました。
ソロがまた、目にも止まらぬ早いフレーズも、和音を連打するダイナミックなフレーズも、自在に次々に取り出され、まるで玉手箱のよう。
海野さんはスウィングを弾くために生まれてきたのかもと私は思いました。
この曲の後のMCで、海野さんは、「今日は歌詞の大好きな曲しか弾かない」とおっしゃって、"They All Lauphed" の歌詞を紹介してくださいました。
「エジソンや、人が空を飛べると言った人を、みんな笑った。
ロックフェラーセンターだって、みんな笑ったけれど、今はそこに上るために列をなしてる。
君と僕の恋だって、みんな笑ってるけどそんなの気にしない。
そんな歌詞なんです。」
「僕の場合も、ろくに英語も話せないのに NY に行って大丈夫なのかって説がありました」
「でも、NYに行ったおかげで、ジミー・コブやハンク・ジョーンズなど、たくさんの自分が憧れていたレジェンドと一緒に演奏できる機会に恵まれ、本当に NY に行って良かったと思っています」

1部の最後、“My Romance" が海野さんのソロでしっとりと始まり、うれしくて目を閉じて聴きほれていたら、"Waltz for Debby" になっていました。
最初だけワルツで、すぐにアップテンポのスウィングになり、迫力満点のアグレッシヴな演奏でした。

吉田豊さんとのデュオアルバム"DANRO" に収録されているバージョンと少し似ていました。

2部の始まりは史上最強の “Girl Talk"

2部の始まりは、レイ・ブライアントの名演で知られる“Girl Talk"
イントロから、ものすごくブルージーで泣けてきました。
この曲も"DANRO"に収録されていますが、それより迫力があって、ダイナミクスもソロのフレーズのバリエーションもより豊かで、胸に迫るものがあります。
海野さんが渡米された後、ウィナード・ハーパー(dr)とよくこの曲を演奏したのだそうです。
ウィナード・ハーパーはレイ・ブライアントとこの曲を演奏されていたと。
私は “Girl Talk" が大好きでいろいろな人の演奏を聴きましたが、レイ・ブライアントより、オスカー・ピーターソンより、シャーリー・ホーンより、そして “DANRO" での海野さんと豊さんのより、この日のこのトリオの演奏が素晴らしかったと思います。
2曲目は“Guilty"
ロイのバンドで初期の頃に教わった曲だとおっしゃっていました。

2部中盤で演奏されたのは “Top of My Head"
ロイの曲です。
この曲のロイ・ハーグローヴ・クインテットのスタジオセッション動画をセッションはロイ・ハーグローヴの真骨頂!でご紹介しておりますので、よろしかったらそちらも。
リユニオン・トリオの演奏は原曲に忠実なアレンジでしたが、管楽器なしのピアノトリオもまた、とても素敵でした。

ロイのレパートリーからもう1曲、サム・クックの “Bring It on Home to Me"
とてもシンプルなメロディーとコード進行だけれど、1度聴いたら忘れられない名曲。
切なさがあふれる演奏でした。

リハなし楽譜なしがジャズミュージシャンを鍛える!

ロイ・ハーグローヴ・クインテットのピアニストとして海野さんを起用し、インタビューなどのたびに海野さんの名前を挙げてほめていたロイ・ハーグローヴさんが、亡くなってまだ2週間あまり。

海野さんがロイ・ハーグローヴについて語ってくださいました。

ロイの曲はインストゥルメンタルで演奏される曲でも、全て歌詞がついているのだそうです。
ロイ・ハーグローヴ・クインテットの一番の人気曲、「ストラスブール・サン・ドニ」も、ロイが亡くなってから、世界中でこの曲に歌詞をつけようという動きがあるけれど、もう歌詞はロイがつくってあるんだと。

彼は海野さんにいつも “Hey,Tada" と声をかけていたそうです。
みなさん、これ、英語っぽく"y"を軽めの発音して読んでみてください。
さすがロイ、意図せず海野さんをメンタル的にも鍛え上げていました!

ロイのクインテットのステージは、リハなし楽譜なしで、バンドにとってヒヤヒヤものであることで有名です。
なんとレコーディングでもそうで、海野さんがクインテットのピアニストになる前に録音され、名盤と呼び声の高い “Ear Food" でも、同じ状態だったとか。
だから、実はレコーディングされているものにも間違いがある!

でも、ロイは「間違いなんてない」が持論だったのだそうです。
むしろ “beautiful mistake" を期待していると。

そして海野さんは続けて
「リハなし、楽譜なし、はジャズミュージシャンを成長させる、だから今日もそうしました」

するとベースの吉田さんが苦笑いしながら
「大変です」。

そりゃあそうですよね。
自由自在、思いのままにリハーモナイズし転調し、テンポを変えリズムや拍子も変え、時に曲まで変わってしまう海野さんについていくのは大変でしょう。
吉田さんが時々、ベースを弾きながらピアノの鍵盤を覗き込み、よしよしって感じで確認していたのが印象的でした。

“Little Girl Blue" からの “Robbin’s Nest" で大盛り上がり!

2部で “Girl Talk" の次に印象深かったのは“Little Girl Blue"
海野さんはこの曲をよく演奏され、私はCDやライブ配信で何度か聴きましたが、これほどドラマチックでスケールが大きい演奏を聴いたことがありません。
途中で3拍子になったりテンポが変わったり、その変化に驚かされたりうっとりしたりしているうちにエンディング。
この曲もエンディングになってしまうのが辛いなあと思っていたら、なんと、メドレーで “Robbin’s Nest" に突入。
“Robbin’s Nest" は、"Pee Ka Boo!" に収録されています。
“Pee Ka Boo!" の中のこの曲では、私はうみのさん歯切れの良いドラムが大好きです。
特にエンディングのフィルインがものすごくかっこよくて、そこを聴く度にニンマリしてしまいます。
が、この日の演奏はもう、ここはニューヨークですかっていうくらい、3人ともキレッキレで最高にグルーヴィーでした。

アンコールは “In The Wee Small Hours of the mornig"
しっとりと本当に静かに心に染み入るような演奏でした。

スケールが大きくて力強いリユニオントリオの演奏を堪能

海野さんの演奏は繊細で力強く、自信にあふれ、びっくりするほど自由自在でした。
思ったことが、すぐにピアノでできてしまうんだなあと思いました。

もちろん鳩を出すとかはできませんが。
ピアノと海野さんがひとつになって美しいものを作り上げているという感じ。
トリオもとっても息ピッタリで楽しそうで、スケールが大きくて最高でした。
ジャズに酔いしれた夜でした。

ライブは終わり、私は海野さんが「売るほど持ってきている」とおっしゃっていたCDを買い、サインしてもらいました。
ちなみに私は海野さんのリーダーアルバムは全て持っておりますので、もちろん2枚目。
家族には内緒です。
「バカじゃないの?」
と言われるのがオチです。
ちょっとバカかもしれないと自分でも思います。

海野さんが歌詞を説明してくださった演奏曲、"They All Lauphed" の中に「最後に笑うものは誰?」という歌詞があります。
海野さんが音楽家としてつかんだ力や幸せは、もう十分「最後に笑うもの」にふさわしいものです。

今後はニューヨークでジミー・コブの90歳記念ライブの予定があるそうです。

心からご活躍をお祈りしております。

そうそう、BODYandSOUL、お料理がおいしく、雰囲気抜群、音響もピアノも最高の、素晴らしい所でした。
京子ママさんという、ジャズの女神のようなオーナーさんがいらして、ライブレポートも書いてらっしゃいます。
今回のライブで私にはわからなかった演奏曲目も、しっかりとつづっておられます。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。


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