海野雅威 “My Romance ~ The first sketch of Tadataka Unno” |ゴニョ研
“My Romance ~ The first sketch of Tadataka Unno" 海野雅威がジャズの重鎮と競演
日本が世界に誇るジャズピアニスト海野雅威のメジャーデビュー作の御紹介です。
このアルバムは、お馴染みのメロディーが多くて気軽に聴けるのに、聴き返すたび新鮮で、ピアノトリオって楽しいって心から思えるような、そんなアルバムです。
このアルバムの録音は2007年7月。
そして海野さんが活動拠点を NY に移したのは2008年。
私が調べた限りでは、海野さんは2006年から2007年にかけて、演奏で2回、NYを訪れているのですね。
2006年には、ニューヨークでライブがありました。JVCジャズフェスティバルの一環で 老舗ジャズクラブ、Sweet Rhythm で演奏し、この渡米の時に鈴木良雄トリオ名義の傑作"For You Featuring Tadataka Unnno"の録音も行ったのですね。そして2回目は本作の録音。
もちろん、それ以前からジャズの本場 NY を活動拠点に置くことへの想いはあったのでしょうが、これらの訪米が彼の背中を押したことは間違いないと思います。
そして、本作の、評価の高さや録音での手ごたえは、NY行きへの決意を固くするのに充分であったことでしょう。
海野さんはNYへ移住し、まさに押しも押されもしない世界的なピアニストへと飛躍していきます。
その記念すべきアルバムをご紹介します。
かなり暑苦しいで!
My Romance~The first sketch of UNNO TADATAKA~
Amazon.co.jpアソシエイト
ジャケット写真をクリックしてアマゾンで試聴可能。
曲目リスト
Milestones(マイルストーンズ)
Whisper Not(ウィスパー・ノット)
My Romance(マイ・ロマンス)
Flappin’ From Here(フラッピン・フロム・ヒア)
Harry’s Blues(ハリーズ・ブルース)
On The Street Where You Live(君住む街角)
I’ve Got You Under My Skin(アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン)
Jubilation(ジュビレーション)
When You Wish Upon A Star(星に願いを)
2007年7月にニューヨーク Avatar Studios にて録音
“My Romance ~ The first sketch of Tadataka Unno" 繊細でダイナミックで奥深い海野の世界!
まずね、このサイドメンはなんなんですか?!
Jimmy cobb(ジミー・コブ) drums
この重鎮2人をサイドに置いて真ん中に来るって、本当に恐ろしいことだろうなと思います。
私は、このアルバムを聴く前も、何曲かは海野さんの演奏を聴いていたんですが、まとめて聴くのは、このアルバムが初めてでした。
アルバムにね、"TADATAKA UNNO TRIO" って書いてあるんですね。
当たり前ですけど。
でも、どうせジミー・コブとジョージ・ムラーツだから、どんな人だって、この2人に食われちゃうだろうって、私、聴く前に想像していたんです。
たいへん失礼ながら、アルバム購入の動機も、半分はジョージ・ムラーツのベースでした。
でも、音を聴いたら
重鎮2人と互角どころか、海野さんがインスパイアしちゃって、2人の演奏のまた素晴らしいこと!!
ああ、ついついしゃべりすぎますね。
1曲ずつ、お聴きになってくださいませね。
今なら(2018年6月15日現在)アマゾンで試聴できます。
1枚買うと2枚付いてくる!
不要なCDを3000円で下取り!
はい、うそです!
すいません。
Milestones
マイルス・デイビス作曲。
マイルスの名盤でリズムを刻んできたジミー・コブへの、海野さんのリスペクトの気持ちが表れた選曲ですね。
ここで聴くべきは、やはりジミー・コブの息をのむようなキレッキレのドラムソロ。
ジミーさん録音当時78歳。
この時、海野さんは、その後ご自分がジミー・コブ・トリオのピアニストになることも、ジミー・コブから息子のようにかわいがられることも、想像さえしていなかったでしょう。
Whisper Not
ベニー・ゴルソン作曲。名曲ですね。
海野さんはアルバムのライナー・ノーツでこう語っておられます。
この曲を今回のレコーディングで最初に録音したのですが、ジョージさんの素晴らしい演奏に、バッキングせずに思わず聴き入ってしまった箇所もあります。
試聴では聴けないんですが、確かにベースソロの始めの方で海野さんは全く弾いていないんです。
ベースソロの時のバッキングって、全く弾かないのも全然ありですが、海野さんはどちらかというと「弾く派」だと私は思うんですね。
決してベースの邪魔はしないけれど、いつもバッキングはしている。
それが、この曲では全然してない!!
数えました!!
24小節、全くバッキングしていません。
そしてバッキング再開の時、
「あ、そうかそうか、忘れてた」
って感じが出ています。
素晴らしいベースソロ。
これ、みなさんに聴いていただきたいなあ。
でも、レコーディングの1曲目から、このソロ!!
それをムラーツから引き出した海野さんもスゴい。
My Romance
リチャード・ロジャース作曲。言うまでもなく、ビル・エバンスの演奏で有名です。
海野さんももちろんビル・エバンスの熱烈なファン。
でも、しれっとしていて、海野さんという人は、とても賢い人。
意識してエバンスとは違ったアプローチをしていると思います。
海野さんとムラーツの、ソロでの歌心合戦が素晴らしい。
いや、もちろんソロもそうなんですが、エンディングとか、テーマでのフィルインの、ほんのちょっとしたベースのフレーズが、センスが良くてグッとくる。
ムラーツさんのベースは、ヘレン・メリルとの来日の時、1度だけ生で聴きましたが、音色の美しさ、力強さ、表情の豊かさ、どれをとっても驚きの素晴らしさでした。
Flappin’ From Here
海野雅威作曲。
海野さんの繊細なタッチやダイナミクスの豊かさが活きる、美しいメロディのワルツ。
しゃれているけれども難解な印象はなく親しみやすい。
本当はかなり難解なコード進行だと思います。
でも、そう思わせないところが素敵。
作曲家としての海野さんも私は大好きです。
さて、この曲名は、鳥がはばたき飛び立つという意味で、海野さんはご自身の現状と重ね合わせて願望をこめたと。
そして、本当にそのとおりになりました。
“Flappin’ From Here"
このアルバムで、海野さんは世界へ羽ばたいた。
Harry’s Blues
これも海野雅威作曲。
タイトルの由来は、海野さんがハリー・ポッターと言われることだそうです。
確かに、魔法を使って演奏してるんだったら納得です。
海野さんの弾くブルースは、もちろんだけど黒人ぽくはない。
でも、黒人とはまた違うソウルが感じられます。
ていねいで奥深い、彼独特のあたたかさが、どんな演奏にも隠されていると思います。
On The Street Where You Live
ミュージカル「マイ・フェア・レディ」の中の1曲。
フレデリック・ロウ作曲。スタンダード中のスタンダード。
クラッシックでも知られた指揮者でピアニストでもある、アンドレ・プレビンのテイクを海野さんも海野さんのお母様も好きなんだそう。実は私も大好きです。
海野雅威トリオ、文句なくご機嫌な演奏!!
ライブだったら、客席のあちこちから
「イェ~イ」って聞こえてきそう。
エンディングでは、バンド全体がだんだん小さい音になっていきます。
この時、海野さん高音域で、チョロチョロっと、でもむちゃむちゃスウィングしながら「上を向いて歩こう」のメロディを弾きます。
そして、どんどん小さくなって、最後はまた急にフォルテでジャーンとしめます。
なんて心憎いアレンジ!!
I’ve Got You Under My Skin
コール・ポーター作曲。
どちらかというとスローでムーディーに演奏されることが多いこの曲を、アップテンポの軽快なボサノバにアレンジ。
ライナーノーツによれば、ムラーツさんにアレンジをほめられたのだそうです。
イントロから始まって全編で使われるベースパターンがとっても素敵。
Jubilation
尊敬するピアニスト、ジュニア・マンスの名曲です。最近、ライブの最終曲としてよく演奏しています。ゴスペルを連想させるこの曲は、生命観に溢れ、演奏するたびに曲からエネルギーを与えてもらっています。
とは、ライナーノーツでの海野さんの言葉。
NYに移住後、海野さんは、ジュニア・マンスにもスタジオで演奏をベタボメされたそうです(NHK FMのジャズ・トゥナイトに海野さんがゲスト出演された、3月17日の放送での海野さんの談話だったと思います)。
もちろん、このアルバムでの演奏も素晴らしい。
でも、最近のCDで聴く海野さんの演奏、ブルースやゴスペルの要素のある曲で、一段と深くて大胆になっているなあと思うことも事実です。
アメリカで本場のブルースやゴスペルを聴き、演奏する機会が多いからなのでしょうかね。
ジミー・コブとジョージ・ムラーツのリズム隊の生み出すグルーヴが最高ですな。
星に願いを
ディズニー映画「ピノキオ」の主題歌としてリー・ハーラインが作曲。
ポップスでもジャズでもスタンダードとなっている名曲。
ジャズではサッチモの録音が有名ですね。
このアルバムでは、なんとテーマをジョージ・ムラーツがアルコ(弓弾き)で演奏します。聴きほれますね。
海野さんの音色はテーマでもバッキングでもソロでも、なんと美しいことでしょう。
1曲目の “Milestones" で激しく鍵盤を連打していたのと同じ人が弾いているとは思えません。
海野さんも、いずれ、サッチモのように、ジャズの熱烈なファンではない人もその名前を聴いただけで温かい気持ちになるような、そんなジャズ・ミュージシャンになるのではないかと、ワタシャ、思っておりますですよ。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
アルバム一覧はこちらの記事にあります。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません