Mack the Knife Ella in Berlin/Ella Fitzgerald 極上のジャズライブ!|ゴニョ研

2018年1月14日ジャズおすすめ

聴衆の熱狂も伝わる最高のステージ!Mack the Knife Ella in Berlin

さて、今回御紹介するのはは、ライブの楽しさが満喫できるエラの一枚。アマゾンで全曲試聴できます。

エラ・フィッツジェラルドは、1918年生まれ。グラミー賞受賞13回、プリンストン大の名誉博士号を授与され、サラ・ヴォーン、ビリー・ホリデイと並び称されるジャズヴォーカルの女王です。声域の広さ、表現の多様さ、そしてなんといっても、どんなに早いテンポでも、果てることなく珠玉のフレーズを繰り出せる、スキャットのアドリブの素晴らしさは群を抜いています。どのアルバムでも、彼女は歌う喜びにあふれているのです。彼女はきっと歌うために生まれてきたのでしょうね。このアルバムは1960年、エラ42歳、ドイツのベルリンでのライブ盤で、熱狂する1万2千人の異国の聴衆を前に、歌う喜びを全身で表現するエラが目に浮かぶ、素晴らしいライブ盤です。バンドのメンバーをご紹介しておきます。

  • Paul Smith (ポール・スミス):ピアノ
  • Jim Hall(ジム・ホール):ギター
  • Wilfred Middlebrooks(ウイルフレッド・ミドルブルックス):ベース
  • Gus Johnson(ガス・ジョンソン):ドラム

1. “Gone wih the Wind (風と共に去りぬ) ”

作詞作曲はハーブ・マジソン、アリス・ルーベル。ビビアン・リー主演の映画とは関係ないようです。歌詞の内容は失恋の歌だけれど、曲は軽快なスウィングで踊りたくなる曲。炸裂するスキャットはないけれど、メロディの崩し方はセンス抜群。彼女の場合、メロディを崩そうと考えて歌うというより、そう歌いたくなってしまうという感じ。

2. “Misty (ミスティ)”

ピアニスト、エロール・ガーナー作曲のバラード。彼は飛行機の窓から眺めた景色にインスパイアされ、この曲を作りました。けれど楽譜の読み書きができない彼は、急いでホテルに戻ってピアノを弾き、借りたテープに録音したという話があります。1曲目とは全く違う、雰囲気たっぷりのエラの歌唱に魅せられます。

3. “The Lady is a Tramp (ザ・レディ・イズ・ア・トランプ) ”

リチャード・ロジャース、ロレンツ・ハートの名コンビの作詞・作曲。舞台は、1930年代の富裕階級、社交界のルールを無視するけれどチャーミングなじゃじゃ馬娘のことを歌ったこの曲はエラの18番。バース(曲に入る前の部分)では、ピアノをバックに茶目っ気たっぷりに歌います。ミュージカルに出したくなりますね。バンドが入るとインテンポ。疾走感満点であっという間にエンディングの絶唱。ブラボー!!

4. “The Man I Love (私の彼氏)”

アイラ・ガーシュイン作詞、ジョージ・ガーシュイン作曲。ジョージ・ガーシュインは“ラプソティ・イン・ブルー”でジャズとクラッシックの融合を図ったことで知られる作曲家。エラは美しいメロディを大切に、大きくは崩さず丁寧に歌っています。

“Summer Time” バラードでは美しい声に酔いしれよう

5. “Summer Time (サマータイム)”

デュボース・ハイウッド作詞、作曲はジョージ・ガーシュイン。今までひっそりしていたギターのジム・ホールが中盤、歌心たっぷりのフィルイン(メロディの隙間などに入れるフレーズ)を聴かせています。でもこのバンドは、エラを引き立てることに専念しすぎで、もう少し冒険してもいいのかなって思うこともありますね。飽くまで主観ですが。エラが凄すぎてなかなか挑戦的にはなれないのかもしれません。高音でしかもピアニッシモ(とてもソフト)でも美しい声です。

6. “Too Darn Hot (トゥー・ダーン・ホット)”

多くの作品がジャズのスタンダードになっている作曲家、コール・ポーターの作品。イントロの、バンドと一体になって「1発かます」かのような、コミカルなアレンジが笑えます。アップテンポで勢いに乗って歌うエラは本当に楽しそう。後半ではギターのフィルインでジム・ホールのセンスの良さが光ります。

7. “Lorelei (ローレライ)”

冒頭、ピアノをバックにささやくように歌います。エラは普通の会話でもこんな風に歌うように話していたのではないかと思うほど、リラックスした自然な美しい歌唱。きっとどんな時にも彼女の頭の中にはメロディーが浮かびハーモニーが流れていたんでしょう。

それにしても、ギターソロの短いこと。なぜなのかよくわかりません。多くのリーダー作のほか、ビル・エバンスとの共演で美しい旋律に満ちた名盤 “Undercurrent” などを残し、多くのギタリストに影響を与えたジム・ホール。音色の変化に凝ったり早いフレーズでまくしたてたりせず、絶えず共演者とのバランスを重視する彼なので、この録音でも、フィルインなどで目立つことはあまりなく、せめてソロはもう少したくさん聴かせてほしかった。まあ、エラのアルバムですからね。

超絶技巧のヴォーカルなのにお茶目なエラが最高にかわいい!!

8. “Mack the Knife (マック・ザ・ナイフ)”

マック・ザ・ナイフをエラが歌い始めると、会場がどよめきます。この曲はドイツが生んだ偉大な作曲家クルト・ヴァイルの作品。エラはこの公演で初めて歌ったというのですが、「18番だよね?」っていうノリノリの歌唱です。この曲は比較的単調なメロディと単純なハーモニー、構成まで単純で短い曲なんですが、それを上手に利用して、中盤からほぼ1コーラスごと半音ずつ転調していくアレンジが、とってもウキウキします。

メロディの崩し方の粋なこと、この上ないですし、ボビー・ダーリン、ルイ・アームストロングなどこのヒット曲を歌った歌手の名前を歌詞に盛り込みながら、ルイ・アームストロングのモノマネまでまじえて歌うエラのおちゃめぶりには脱帽です。エラとルイは、1956年にアルバム “エラ&ルイ” をリリースし、これが好評でいくつも続編を録音しているので、彼のフレーズをまねることなど、エラにはお手の物だったでしょう。しかし、エラはそれ以前からすでに彼の物まねをステージでの目玉に据えていたようです。そのせいで1952年に声の不調が深刻になり手術したというのだから驚きです(ジム・ハスキンズ著、山田久美子訳、“エラ・フィッツジェラルド”、音楽之友社、1995年、p171)。そう、この曲、ピアノも手を変え品を変え、バッキングにフィルインに、その引き出しの多さを披露してくれます。バンドメンバーの息もぴったり。ちょっと控えめ過ぎですけどね。

9. “How High the Moon (ハウ・ハイ・ザ・ムーン)”

1コーラス目はミディアムテンポの4ビート。楽しい雰囲気で始まったなと思ったら、ドラムの激しい連打から強烈にテンポアップし、疾走し始めます。エラのアドリブは枯れることのない泉のよう。息継ぎだけのためと思われる休符のみでフレーズを次から次へと歌ったかと思うと、低音ですごんだりファルセットで歌ったり、ドラムの音を真似をしたり、そうかと思うと、エラのヒット曲 “ティスケット・ア・タスケット” や、“煙が目に染みる” の1節を歌ってみたり、まあ忙しい。でも、本当に楽しそう。1万2千の聴衆を前に、ステージ上を行ったり来たりして底抜けに明るく歌うエラの姿を思い浮かべて、嬉しくなっちゃいます。

ジャズ・ヴォーカリストがスキャットで楽器のようなアドリブを歌うのは、ルイ・アームストロングが元祖で、収録中に歌詞を忘れて適当な言葉で歌ったのが始まりなんだとか。そんな失敗がジャズ・ヴォーカルの歴史を変えるんですから、天才は失敗しても天才!

エラはもともと貧しい家に生まれ、父親は早くに亡くなり、幼いころは売春宿の前で警官が来ないか見張る役目をしたりしていたそうです。また、アメリカで人種差別を禁じる公民権法が設立されたのは1964年。このベルリン公演の頃はまだ、アメリカ国内では同じバンドのメンバーでも白人と黒人では乗り物やトイレやホテルが別々だったでしょう。

そんな差別を受けながらも、次から次へと玉手箱のように驚異的なフレーズを紡ぎだし、歌うことが楽しくてたまらないような天真爛漫なエラ。娯楽の少ない時代に彼女の歌が多くの人を熱狂させたわけが、このアルバムで、よくわかりました。

クリスマスソングはジャズ!定番曲をおしゃれな演奏ででは、エラ・フィッツジェラルドの ”Ella Wishes You a Swinging Christmas” をはじめ、クリスマスソングを最高のジャズで聴けるアルバムをご紹介しています。
ここでも、ビッグバンドをバックに、最高にスウィングするエラの歌声が聴けます。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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