ピー・カ・ブー! 海野雅威 1st Album |ゴニョ研

2018年4月26日ジャズおすすめ

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海野雅威"Pee Ka Boo!" デビューアルバムとは思えない完成度!

今回、ご紹介するのは、いまや日本を代表するジャズ・ピアニストとなった海野雅威さんのデビューアルバム「ピー・カ・ブー!」です。
アマゾンで全曲試聴できます(2018年4月26日現在)。是非試聴だけでもしてみてくださいね。

リリースが2004年ですから海野さんが24歳の時。
このころから、彼はもう、びっくりするほど上手い!
親しみやすく上質で丁寧な演奏スタイルは今と変わりません。
そして彼のオリジナルは素敵。
スタンダードになりそうな、口ずさめるチャーミングな曲揃い!

そりゃ、最近のアルバムの方が表現の幅が広く、大胆でドラマチックな演奏です。
でも、ちょっと荒削りなところや、ちょっと青臭い感じのところが何とも言えない良い味を出していると思います。

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“Pee Ka Boo!"のメンバー紹介

海野 雅威(うんの ただたか):piano
吉田 豊(よしだ ゆたか):bass
海野 俊輔(うみの しゅんすけ):drum

このトリオは、2004年には横浜ジャズ・プロムナード・コンペティションにて、グランプリ及び市民賞を受賞しています。
ああ、だからレコーディングの話がもちあがったのかって、思ったら違いました。

このアルバムの録音は5月、コンペティションは10月。レコーディングが先でした。

若々しい海野さんが微笑ましい! "ピー・カ・ブー"の各曲ご紹介!

1.B.B.A.

激しいドラムのイントロの後、ピアノの両手のユニゾンでテーマが演奏されて、アップテンポの4ビートで疾走します。バド・パウエルを思い出せるような緊張感のある難しい曲。海野さんのオリジナル。
バラードの時とはピアノの音色がまるで違う。鋭いけれど、でもきれい。
中盤のドラムソロではバスドラの使い方がおもしろいですね。

2.We Will All Together

作曲はハンク・ジョーンズ。この録音の頃には、海野さんはまさか4年後にご自分がハンク・ジョーンズと毎日のように連弾するとは思ってもみなかったでしょう。
この曲はリラックスしたムードで、ゆったり演奏されますが、ハンクの"The Trio"(1956年)に収録されたものは、もっとアップテンポです。
海野さんのトリオの演奏は、ハンクのこの曲の親しみやすさ、暖かな明るい雰囲気をとてもよく表現していると思います。
口笛を吹いてスキップしたくなるような軽快なピアノソロに続いて、歌心にあふれた吉田さんのベースソロ。
日曜日の朝に聴きたい1曲。
ちょっと気になるのは、タイトルがハンクの曲は"We’re All Together" なんですよね。

3.Triste

ジョビンの名曲。美しいメロディーとハーモニーに酔いしれます。
海野さんのピアノは、この録音においても、ひとつひとつの音の音色、強弱、アクセントなどが、全て彼の意図でコントロールされているのだと感じます。
ジャズピアニストって、どちらかというとフレーズ優先です。
「何を弾くか」が「どう弾くか」よりも大切で、どちらかと言うと後者はないがしろにされている気がします。
「どう弾くか」すなわち音色や強弱やタッチは、コントロールしきれていないのだなと思う人もいます。それも個性かもしれないけれど。
海野さんは、どんな曲のどんな一音も、彼のコントロール下にない時などないのです。
もちろん、「何を弾くか」の部分も素晴らしい。

4.Virgo

作曲はHorace Silver。この曲も1曲目のようにハードバップを感じさせます。超アップテンポで全力疾走。しかし、テーマが難し過ぎる。よく弾けるなあと思います。Horace Silver の"6 Pieces of Silver"(1957年録音)のバージョンを聴いてみても、テーマを演奏している管楽器はちょっと苦しそうで、ユニゾンがばっちり揃っているとはいえません。むしろ、アドリブの方が生き生きと吹いている。
それを、海野さん、よく弾けますわ。まあ、ピアノですから管楽器とは違うけれど、それにしても後半はなんとテーマをピアノソロで弾きます。右手がメロディー、左手でオルタネイティングベースとコードのバッキング。お見事です。
そして、このトリオがいかに息ピッタリなのかが、よくわかります。

5.I Got It Bad

デューク・エリントン作曲。打って変わってしっとりとスローな4ビートで癒される曲です。
この絶妙なモタり方! 間といい、緩急の構成といい、なぜ24歳でそんなに円熟しているのかと驚きます。弾きすぎないアドリブもいい。
こういう曲は、酸いも甘いもかみ分けないと味わい深く弾けないのかと思ったらそうではないようです。
それと、もう一つ言うなら、こういう繊細なニュアンスを要する演奏は、その後さらに磨きがかかり、今の海野さんなら、2小節くらい聴いただけで胸が苦しくなるほどです。
“I Got It Bad" 「私、のぼせあがってたのよね」という意味らしく、そんな女性の心を歌った歌。

う~~~ん、海野さん、24歳ですでに、かなり多くの女性をのぼせあがらせていたのだろうか…。

そうかも。

新たに湧き上がる海野雅威スケコマシ説…。

あ、いや、大変失礼いたしました。

6.Whisper Not

名コンポーザーとして知られるテナーサックス奏者、ベニー・ゴルソンの作曲です。正統派の演奏です。鍵盤のアドリブでは、両手でフレーズをユニゾンすることは、よくあるテクニックですが、どんな早いフレーズでもできちゃうところが素晴らしい。まあ、そのほかにも、どんだけ技があるんじゃ、と思うほど、いろんなアドリブの手法を、これでもかと聴かせてくれますね。

7.Pee Ka Boo!

海野さんのオリジナル。私はこのタイトル曲が、このアルバムの中で一番好きです。親しみやすいメロディと心にしみるハーモニー。
海野さんの優しいタッチが美しい音を紡ぎ出して、聴くだけで温かい気持ちになれます。
“Pee Ka Boo!"って、英語で「いないいないばー」って意味なんです。
お母さんが抱いている小さな赤ちゃんに向かって、お父さんが「いないいないばー」をして、赤ちゃんがゆっくりと微笑む、そんなシーンを想像します。

8.In THe Wee Small Hours of the Morning

デビッド・マン作曲。美しいバラードです。
ドラムのうみのさんは、ピアノの海野さんの親族かと思っちゃいますが、違うようです。そんなことより、ブラシもいいですね。このドラム。
そして、アドリブの後、吉田さんのベースがメロディを弓弾き。
この曲にピッタリです。

9.Robbin’s Nest

サー・チャールズ・トンプソン作曲。なんともしゃれた粋な曲です。そして海野さんの演奏もしゃれている。ベースのグルーブもとっても気持ちが良い。そしてベースソロのカッコいいこと!!

もちろん海野さんの演奏は、ジャズ通をも唸らせるものだと思いますが、特別な知識や強い興味がない人からも
「ジャズなんてよくわかんないけど、これは気持ちいいね」
って言われるような、そんな演奏だと思うんです。

10.Time After Time

Jule Styne作曲。フランク・シナトラの歌で知られる美しいバラードで、シナトラの熱唱に魅せられます。海野さんは、ちょっと軽快なスウィングのアレンジでのピアノソロ。肩の力が抜けたしゃれた仕上がり。
私はこの曲で海野さんと出会ったのです。
優しくて、そっと肩を抱いて、黙ってそばにいてくれるような、そんなイメージのこの曲は何度聴いても心にしみます。

海野雅威"Pee Ka Boo!" メンバーの人柄がにじみ出た味わい深いアルバム

いやあ、なんとバランスの良い、調和のとれたトリオなんでしょう。誰一人として、「俺が俺が」と言っていないところが、素晴らしい。みんな控えめなのに、とても心打たれます。若いのに、できた人たちです。
見習わねば。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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海野雅威のリーダーアルバムの全て、参加アルバムの一部はご紹介記事を書いております。
アルバム一覧はこちらの記事にあります。

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