海野雅威のピアノの素晴らしさがわかる!ジャズ偉人との逸話集|ゴニョ研

2018年7月26日ジャズおすすめ

夕日を称賛する少年たちの写真

海野さんの経歴、リーダーアルバム、サイドメンとして参加したアルバムなどは、海野雅威の情報集結!ライブ・アルバム・お宝動画・逸話等一覧!試聴付でご紹介しております。

こんにちは

海野雅威(うんの・ただたか)さんのピアノを1日でも聴かないと禁断症状が現れるガッツかよめです。

海野さんは、ニューヨーク在住の日本人ジャズピアニスト。

ジャズピアニストとして世界最高峰と称され、ジミー・コブ、フランク・ウェスなどレジェンドに請われて共演を果たし、2016年からはロイハーグローヴ・クインテットに参加するなど、輝かしい経歴の持ち主なんですね。

でも、なんていうか、その割にあまり知られていない気がするんです。

ですから、今回は、海野さんが、その演奏の素晴らしさで、ジャズの大御所たちを感動させてきたエピソードを、彼のブログの文章を引きながら、ご紹介したいと思います。

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海野雅威さんのピアノに感動した人々とそのエピソード

Corcoran Holtさん(@corcoranholt)がシェアした投稿

インスタから写真を拝借しました。右端が海野さんです。

でもねえ、ひとつ心配なことがあるんです。
海野さんご自身はね、そういうことをひけらかしたりするのが、多分嫌いだろうなということです。
つい先日の彼のブログにも、そんなことが書かれています。
彼の熱心なファンから、「もっと自分で実力をアピールして有名になってほしい。」と詰め寄られたそうなんですよ。

しかし、本人にそんな事を言われてもこちらも困ってしまうのである。なぜなら当たり前の話、有名になる為に音楽を演奏しているわけではないから。日々の活動を地道に積み重ねて自分に正直に進んでいく中で、「結果的に」世間に認められて日の目を見る事があるかもしれないし、ないかもしれない。この会話で何となく、「あなたは不幸ですね。」と言われているように少し感じてしまった。でも幸せの価値観って他人が勝手に決めるものではない。音楽がただ好きで始めたはずのミュージシャンが、有名になる事がその目的になってしまうとそれはまさに本末転倒になってしまう。自己アピールしてのし上るという考えも自分とはズレている。

「幸せの価値観」、海野雅威雅の気まますぎるダイアリー、2018-07-03

彼の、この姿勢は本当に終始一貫していて、あまりにも清廉潔白すぎるのではないかと心配になるほどです。
しかし、そんな彼の人柄や音楽にかける一途な思いが音楽にも表れ、それでなお一層、周囲の音楽家から愛されているのだろうとも思います。
彼のひたむきな向学心、ジャズの先達(せんだつ)への限りない敬意、音楽への熱い思い。

海野さんの音楽的な能力の高さがベースにあって、その情熱が表現されるからこそ、賞賛されるのでしょうね。

前置きが長くなりましたが驚がくのエピソードをご紹介していこうと思います。
記述の順が時系列に沿っていないことをお断りしておきます。

ロイ・ハーグローブにスカウトされる!

世界中のジャズ・ミュージシャンが尊敬するロイ・ハーグローヴのクインテットに、海野さんが加わったのは2016年のことです。

Jimmy Cobbトリオのレコーディングの際にゲストで数曲Royに参加してもらい、その時に彼が気に入ってくれた事、またレギュラーメンバーのJustin Robinson、Sullivan Fortnerの推薦もあり実現しました。黒人バンドの代名詞であるこのバンドで、初めての日本人メンバーとなり責任も大きいですが、メンバーが信頼してくれている事に大きな喜びを感じました。この出来事もRudy(Van Gelder)や、Scott(Hamilton)と同じく、昔から憧れていた方とまさか自分が演奏や仕事をする事になるとは思ってもいなかったことであり、まさに夢が叶った大きな日でした。リハもなし、曲もその時までわからない緊張するステージでしたが、天才としか表現できないリーダーの音楽への愛、優しさを感じ学ぶ事も多い最高の機会でした。

「近況、11月日本ツアーのお知らせ!」、海野雅威雅の気まますぎるダイアリー、2016-10-26
文中()は筆者が追記

ロイの雑誌のインタビューなどを読むと、聞かれてもいないのに海野さんのことを持ち出してほめていますし、ステージでも、ピアノソロのたび、まるで恋する乙女のように、ムチャムチャ愛おしそうに海野さんを見つめていて、いつも真っ先に海野さんをメンバー紹介しています。

あっ、ロイ・ハーグローヴについての詳細は、ぜひ、追悼・ロイ・ハーグローヴの名演名盤を聴こう!をご参照くださいませね。

Rudy Van Gelderにハグされる!

ルディ・ヴァン・ゲルダーさんは、こんな人物です。

ヴァン・ゲルダーは一般に音楽史上で最も重要なレコーディングエンジニアの一人と考えられており、古典的名盤といわれるものも含め、数百のセッションを録音したジャス史の影の伝説的人物である。現在一般的に考えられている「ジャズの音」を作ったパイオニアであり、歴史に残る数々の録音を残してきたその功績から2009年にNEA Jazz Masterを授与されている。

彼はジャズのレコーディングに今までになかったような明晰さを持ち込み、トランペッターのマイルス・デイヴィス、ピアニストのセロニアス・モンク、サックス奏者のウェイン・ショーターやジョン・コルトレーンといったジャズ界の偉人の作品を多く録音した。ゲルダーは多くのレコード会社と仕事をしたが、特にブルーノートと深い関係を持っていた。

「ルディ・ヴァン・ゲルダー」日本語版ウィキペディア、2018年4月27日 (金) 06:40 UTCの版

こんな神のようなエンジニアに、海野さんは、レコーディング後、「満面の笑みと共にハグ」されるのです。この方、「頑固でほとんど褒めたりしない」そうです。そして、なんと、この時ルディさんは91歳で、これがルディさんの最後の録音になりました。
※「」は「変わってしまうもの、決して変わらないもの」、海野雅威の気まますぎるdiary、2018-06-18より引用。

ルディさんの最後のお仕事はこれです。

以前、"Remembering Miles – Tribute To Miles Davis" が、ヴァン・ゲルダーさんの遺作とご紹介していたのは、私の大きな勘違いでした。
本当に申し訳ありません。
お詫びして修正いたします(2019年10月7日)。
ルディ・ヴァン・ゲルダーさんの最後のお仕事は、上にご紹介したアルバム “Remembering U" です。

このアルバムは、まだ日本では発売されていませんが、2019年11月にはCDリリース予定だとか。

Village Vanguard のオーナー、Lorraine Gordonさんにもハグされる!

あのビル・エバンスなど、数々の名演を生んだ、NYのジャズのライブハウス、Village Vanguard のオーナー、ロレイン・ゴードンさんにもハグされたんですね。

とても気難しくて怖いと恐れられているような事を言う人も多くいるけれど、自分にとってはまったくそういった印象はなかった。演奏後に興奮した表情でハグをしてくれて、"You are wondeful pianist!"とあたたかいお言葉をかけてくださり、その言われているようなイメージと全く違った。

「変わってしまうもの、決して変わらないもの」、海野雅威の気まますぎるdiary、2018-06-18

ジョージ・ムラーツにアレンジをほめられる!そしてジミー・コブにかわいがられる!

これは2007年7月2日に行われた、 “My Romance ~ The first sketch of Tadataka Unno" のレコーディングでのことです。
そうなんです。このレコーディングでのサイドメンはなんと!
ジョージ・ムラーツとジミー・コブ!!

このアルバムの7曲目にコール・ポーター作曲の、"I’ve Got You Under My Skin" が収録されています。
この曲について、アルバムのライナーノーツに引用されている、海野さんご自身の言葉を借ります。

好きな作曲家ということでいえば、コール・ポーターもはずせません。そこで、前からアレンジを持っていたこの曲を取り上げました。同じコードの繰り返しが特徴的なこの曲を、より楽しめるように工夫しました。ジョージさんがアレンジを褒めてくれたのがうれしかったです。

アルバム “My Romance ~ The first sketch of Tadataka Unno" ライナーノーツ、中川ヨウ著、2008年3月記

この収録の前日、一睡もできなかったということは、海野さん、いろんなインタビューで明かしてらっしゃいます。

ジョージ・ムラーツさん、演奏は非常にクールですし、ライブでお見受けする限りでは、そんなに社交性のある方とは思えません。きっと、この方もあまり音楽家をほめたりしない人だと推察します。この曲の海野さんのアレンジは本当に魅力的で、きっとほめずにはいられなかったのでしょう。

また、この録音の後、海野さんはジミー・コブ・トリオのレギュラー・メンバーとなります。ジミーさんとは家族ぐるみのお付き合いとなり、海野さんは息子のようにかわいがられるのですね。

海野さんは、NYでほかにも、いろいろな素晴らしい音楽家と、とても温かい関係を結んでいるのだろうということが、インスタの写真からも伝わってきます。

Clifton Andersonさん(@cliftone1)がシェアした投稿

ハンク・ジョーンズに愛される!

Hank Jonesのお宅に遊びに行ってきました。

遊びに行くといつも快く迎え入れてくれて、可愛がってくれます。一度連弾を始めると僕もHankも止まりません。この日は3時間ほど!本当に音楽を愛しています。それにHankは大のジョーク好き。いつも笑わせてくれます。沢山話もしました。往年のジャズミュージシャンについて、彼の生きてきた時代について、これからの夢について・・・。

Hankは90歳だから、僕と年の差なんと62歳! Charlie Parkerが生きていたとしても彼より年下!

時々「音楽」と「人間」が切り離されて考えられることがありますが、僕はそうは思いません。技術や理屈ではない、と信じています。

Hankのピアノを聴くと彼の生き方をすごく感じます。

温かいピアノはHankそのもの。

まさに最高の師匠、です。

「孫と偉大なおじいちゃん」、海野雅威の気まますぎるdiary、2009-01-11

ハンクと3時間連弾したピアニストって、そうはいないんじゃないでしょうか?
それ、録音しておいてほしかった。本当に聴きたいです。

そして、この後、2010年5月、ハンクを看取ったのも海野さんなのですね。
海野さんの心の中で、海野さんの演奏の中で、ずっとハンクは生き続けるでしょう。

ディック・モーガンの奥様に彼のピアノを受け継いでほしいと乞われる

ディック・モーガンというピアニストをご存知ですか?
日本ではあまり知られていないけれど、アメリカではオバマ大統領から哀悼の手紙が来るほどのVIP。
エリントンに励まされてピアニストを志し、1960年代にキャノンボール・アダレイに見いだされてアルバムを録音する。けれど故郷のワシントンDCで活動することを選び、以来ずっと、地元のファンに愛され続け、2013年、84歳で亡くなられました。
ディック・モーガンは海野さんのアイドル。
海野さんのブログによれば、「渡米以来、ワシントンD.C.エリアでのみしか演奏をしていない彼のライブを聴きに行く事が目標の一つになった」のだそうです。そして念願かなって「2011年、彼の地元にある老舗クラブ Blues Alley でのライブを」聴くことができ、「お話する機会も得て、日本人のピアニストで彼のファンという事に逆に非常に喜んでもらい、持参した “At The Showboat" のレコードに心良くサインをして」もらったのに、彼は亡くなってしまいます。そこで、海野さんはディックの追悼セレモニーに参加し、その帰りに「Dickと30年来に渡って演奏活動を共にしてきた」ベースのDavid Jernigan とセッションします。David が「この演奏を非常に喜んで」、「Dick Morganのトリビュートコンサートにピアニストとして参加」することになるのです!
※「」は「Dick Morgan Tribute Concert」、海野雅威の気まますぎるdiary、2014-09-16より引用。

このコンサートは2014年1月10日に行われました。

Dick本人のバンドで彼の形だけ真似た演奏など通用するわけないと感じ、自分を通して自然と表れるDickへの敬意が伝わればいいと無心で演奏した。聴衆が非常に温かく、演奏後は人生初の観客総立ちのスタンディングオベーション受けたが、Dickの奥様Sylviaも僕の音楽の中にDickの魂を感じて涙を流して喜んでくれた。夢のような一日だった。

Dick Morgan Tribute Concert、海野雅威の気まますぎるdiary、2014-09-16

そして、この追悼コンサートの第二弾のDick Morganのトリビュートコンサートが2014年9月12日にも行われました。

50年以上Dickを聴いて来たという老夫婦が大興奮して聴きながらダンスをして喜んでくれたり、また温かな歓迎を受けとても嬉しかった。演奏後にDickの奥様Sylviaが、「Dickの音楽の魂を受け継ぐのはあなただから」とDickの使っていたピアノを引き継いで欲しいというお話を頂いた。まさかそこまでそういう事を感じてくださっているとは思いもよらなかった。なんて光栄な事なのだろう!

Dick Morgan Tribute Concert、海野雅威の気まますぎるdiary、2014-09-16

海野雅威さまへのガッツからのお願い

いやあ、素晴らしいですね。

海野さんの演奏を聴いて、衝撃に近い感動を覚えるのが私だけではないと知って、ちょっと安心しました。というより、ジャズを知り尽くし自らも厳しいジャズの世界で切磋琢磨してきた強者達が、無条件に海野さんをベタボメしている様子に驚きを禁じえません。

それからねえ、余談ですけど、海野さん、文章も素敵です。きっと書くこともお好きなんですね。それから、びっくりするほど写真がうまい。構図がいいんですよね。
ニューヨークの街角を撮った、何気ない一枚が、見とれるほど美しい。とんでもなくバランスが良くて、メリハリが効いて、センスも抜群で、ピアノと一緒ですね。

私は、こんなに海野さんが好きなのに、いまだに海野さんがリーダーとして演奏するライブに行ったことがないんです。でも海野さんのライブに行った方の情報によると、海野さんのしゃべりはとつとつとしていて、「あのー」を繰り返すMCがとても可愛らしいとのことでした。

どんなに早いテンポの曲でも、常にクリアな音でキレッキレのフレーズを弾きまくるピアノとのギャップが素敵です。

で、最後にね、言いたいことがあるんです。海野さんに。

今度日本でライブをする時はですね、是非「ファンが海野さんをハグする集い」とか、やってくれませんかね?

夫ポンポン

夫ポンポン

あほですな!
ガッツかよめ

ガッツかよめ

ちゃんと、あんたもハグしてやるから!
夫ポンポン

夫ポンポン

いりません!

海野さんの他にも世界で活躍する日本人ジャズピアニストがいます。

[必聴]いま世界で活躍する日本人ジャズ ピアニスト8人では、海野さんを含め8人の日本人ジャズピアニストの、素晴らしい演奏をたくさんご紹介しています。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!

海野雅威のリーダーアルバムの全て、参加アルバムの一部はご紹介記事を書いております。
アルバム一覧はこちらの記事にあります。

海野雅威の大ファンがまとめた、逸話・動画・アルバム等一覧!試聴付

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