Tony Bennet Duets Ⅱ 一家に一枚!聴きほれる名盤!Gaga 熱唱!|ゴニョ研

2017年12月16日ジャズおすすめ

目次

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ジャンルや国を越えスーパースターを集めた超豪華アルバム

トニー・ベネットは1926年生まれの91歳、70年以上歌い続け、ジャズとポップスの垣根を取り去り、アメリカの、いや世界の国民的歌手と言えそうです。

このアルバムは、2011年9月20日に、彼の85歳の誕生日に合わせてリリースされ、グラミー賞3部門を制覇し、ビルボード初登場1位を獲得したことでビルボードの最年長首位記録を大幅に塗り替えるという快挙も、成し遂げています。ジャンルや国を越え、グラミー賞常連の、実力・人気ともに兼ね備えたスターをゲストに迎えデュエットするという企画の第2弾で、第1弾は2006年にリリースされた “Duet: American Classics” で、本作同様高い評価を得ています。

豪華スター同士の共演というと、別々に録音したものを編集するものもあるようですが、本作はスタジオで和やかに歌う二人が収録されたDVDも出ています。噂では、このアルバム制作に半年もの時間がかかったのは、17人ものデュエット相手の所へ行っていたことが原因だそうです。クレジットには、録音された場所として、Bennet Studios のほか、ロンドンやニューヨークのスタジオ、そしてゲストであるアンドレア・ボチェッリやマライア・キャリーのホームスタジオも記されていました。業界きっての重鎮トニーとのデュエットは、さぞ緊張するものだろうと思いきや、共演者はみなリラックスした様子でのびのびと歌っています。

ゲストは、これでもかと言うほどの大物揃い。カントリー、クラッシック、R&B(リズム&ブルース)など、様々なジャンルの人気者ばかりを集めてくれば、ヒット作が作れるのは当たり前ですが、曲はほとんどがジャズのスタンダード。一方ゲストは、ノラ・ジョーンズとナタリー・コール以外はほぼジャズの門外漢。それを、絶妙な選曲と珠玉のアレンジ、そしてトニーの歌唱力と人柄で、その人の新たな魅力が見事に引き出される作品に仕上げているところが、このアルバムの素晴らしさだと思います。

さて、では曲を聴いていただきたいと思います。

Lady Gaga には是非ともジャズへの転向をおススメしよう!

1曲目 “The Lady is A Tramp” のお相手はレディ・ガガ

言わずと知れたポップス、ダンスミュージックの女王ガガ。この曲はアップテンポで威勢が良いけど、メロディを歌い上げることも重要で難しい曲だと思います。ガガは彼女の世界のまま自由奔放で、かつ見事にとても上質なジャズに仕上げています。素晴らしい歌唱力!! ノリノリでシャウトする彼女に反し、終始ゆったりと構えるトニー。

後半、トニーが “go” と言うと、アドリブの始まり。ガガが4小節、トニーが4小節、サックスが8小節。アドリブの間、バックのブラスはキレのいいアクセントを入れていますが、これに絡むトニーのアドリブフレーズの素晴らしいこと。よくジャズでは短いアドリブを交代で演奏しあいますが、このアドリブは短すぎて切ないです。

この曲はボーカル以外にも聴きどころ満載で、イントロがすごいんです。試聴できなくて本当に残念!! ドラムの Harold Jones の全くブレがなく粒のそろったドラミングが光ります。思わせぶりで、なんてカッコいいのでしょう。この8小節で私は虜(とりこ)になりました。そして歌が始まると、随所にちりばめられている宝石のようなピアノのバッキングやフィルイン(メロディの隙間に入れるフレーズ)。ピアノは Lee Musiker 。ニューヨーク・フィルなど数々のクラッシックの楽団との共演歴も持ち、指揮者でもある彼は、出過ぎず引きすぎず、ここぞという所でとびきりのフィルインやバッキングを入れる技は圧巻です。この曲以外でも、イントロやエンディングのピアノの印象的なフレーズに是非耳を傾けてみてください。彼はこのアルバムで全曲ピアノを担当し、音楽監督も務めています。

グッとくる!ジャズで聴く大人のクリスマスソングでは、トニー・ベネットの"A Swingin’ Christmas"をご紹介していますが、ここでも Lee Musiker の素晴らしいピアノが聴けます。

2曲目“One For My Baby (And One More For The Road)” のお相手は John Mayer(ジョン・メイヤー)

ジョン・メイヤーはギタリストとしても評価の高いシンガーソングライターです。緊張気味に暖かな声を聞かせています。

Amy Winehouse の渋すぎ “Body and Soul” を聴きながら彼女の人生に思いをはせよう

3曲目は “Body And Soul” のお相手は Amy Winehouse (エイミー・ワインハウス)

2011年3月に27歳で早世し、これがエイミーの最後の録音と言われています。彼女は、敏腕プロデューサー、マーク・ロンソンと組んで、ジャズとヒップホップとレトロっぽいポップスを合わせたような独自の世界を作りだして、大ヒットを飛ばし高い評価を得ました。しかし私生活では薬物とアルコールの中毒で施設入所を繰り返して、音楽活動への復帰も危ぶまれるような状態だったそうです。

この曲では、バラードの美しいメロディーを彼女らしいフェイクで歌い、ビリー・ホリデイを思わせる独特の声が曲調にピッタリ。不思議とトニーともうまく調和しています。ちょっとだけ、エイミーの人生に思いをはせたりします。聞き逃してしまいそうなくらいに短いですが、歌心あふれるビブラフォンのソロが魅力的。これ、試聴でも少しだけ聴けます!! ぜひぜひ!! エンディングの盛り上がりにドキドキします。イントロでもエンディングでも効果的に使われているハープに胸がきゅんとします。この曲は最高にロマンチックでお酒飲みたくなっちゃいますよね。

4曲目 “Don’t Get Around Much Anymore” のお相手 Michael Bublé(マイケル・ブーブレ)

ブーブレはカナダでは国民的人気を誇る歌手。この曲は、“キャラバン” など歴史的な名曲を残した作曲家でピアニスト、ジャズの代名詞ともいうべきデューク・エリントンの作曲。後半で、管楽器隊の演奏にはさまったサックスソロがあります。管楽器隊、サックスソロ、管楽器隊、またサックスソロ、と4小節ずつ交互に演奏。私、ここが大好きなんです。ビッグバンドらしい、本当に良いアレンジ。そして、ちょうどここ、試聴の後半で聴けます。アレンジャーは Marion Evans。数々の音楽家から絶大な信頼を受け、legend(伝説)と言われるほど。このアルバムでも1曲目を含む5曲のアレンジと指揮を担当しています。

5曲目 “Blue Velvet” お相手は k.d.lang(ケー・ディー・ラング)

ケー・ディー・ラングは、カナダから。カントリーの影響を受けたポップシンガーで、カナダでは音楽の殿堂入りも果たしています。トニーとは、1作目のデュエットでも共演しています。この曲にピッタリな落ち着いた歌声を聴かせてくれます。

この曲 “Blue Velvet” は1951年にトニーがヒットさせた曲ですが、私、なんか聴いたことあったんです。私が高校生の時に大好きだった、山下達郎のアルバムの中の1曲でした。それは多重録音によるアカペラの “on the street corner” というレコードで、アカペラなんてまだ誰も知らなくて売れなかったようですが、この間、テレビかなんかで見たインタビューでブルーノ・マーズが持っていると言っていて、びっくりしました。余談なんですが、山下達郎のほうも、とても素敵ですよ。

アレサ・フランクリンとトニー、合わせて153歳の驚きの絶唱に心を揺さぶられよう

6曲目 “How Do You Keep The Music Playing” のお相手は Aletha Franklin(アレサ・フランクリン)

アレサは、Queen of Soulと言われ、ソウル、R&B で多くのヒットがあります。1942年生まれですから録音時には68歳でしょうか。エンディングでのトニーとの迫力満点の絶唱は2人合わせて153歳の人のものとは、とても思えません。アレサの2015年の歌唱を動画で見ましたが、その歌声の力強さは全く年齢を感じさせないものでした。「歌が上手い」なんていうチャチな表現はとても彼女には使えないと思います。神々しい歌唱です。噂によると彼女はレストランなどで、すぐに歌いだしてしまうクセがあるとか。一度でいいから、そんなレストランに居合わせてみたいものです。

7曲目 “The Girl I love” のお相手は Sheryl Crow(シェリル・クロウ)

シェリル・クロウは、アメリカのカントリー・ウエスタンの歌手で作曲家としても活躍しています。彼女のヒット曲 “If It Makes You Happy” を聴いてみたら、もろロックっぽいダミ声で歌っていたのでびっくりしました。アメリカで大ヒットしている歌手は、どんなジャンルの人でも、とてもしっかりした歌唱力を持っているのですね。それがやはり、アメリカ音楽界のレベルの高さなのでしょう。

ウィリー・ネルソンの土臭い歌とギターに心底ほっとしよう

8曲目 “ON The Sunny Side Of The Street” のお相手は Willie Nelson(ウィリー・ネルソン)

ウィリー・ネルソンはカントリー界の重鎮です。この曲は誰でも一度は聴いたことがありそうなスタンダードですね。邦題は「明るい表通りで」。だみ声とトランペットで知られるサッチモこと、ルイ・アームストロングの曲です。とっても親しみやすいギターソロはウィリー・ネルソン自身によるものです。キレッキレで一部のスキもないバックバンドと違って、とっても温かいこのソロ。ちゃんと試聴でも聴けます。歌も味があって私は好きです。なんか、ほっとしちゃう。それにしても選曲が計算しつくされていますね。

9曲目 “Who Can I Turn To” のお相手は Queen Latifah (クィーン・ラティファ)

つやのある素敵な声で、こんなジャズシンガー知らないなって思ったら、もとはラップの人。1990年代からは R&B を歌っているようです。私が見た、彼女がラップを歌っている動画では廃墟(はいきょ)のようなところで拳(こぶし)を振り上げていて、ちょっと怖かったです。とても同一人物とは思えません。

この録音では弦楽器が非常に美しく、盛り上がりのあるオーケストラのアレンジに聴きほれます。アレンジャーは Jorge Calandrelli(ホルヘ・カランドレッリ)。アルゼンチン生まれの作曲家でもあり、クインシー・ジョーンズ、ポール・マッカートニー、ヨーヨー・マなど、ジャンルを越えて数々の大物のアルバム造りに携わっています。このアルバムで12曲のアレンジと指揮を担当しています。

この曲は、イギリスのミュージカルの中の曲で、アメリカに最初に紹介したのがトニーなのだそうです。美しいメロディと胸がきゅんとするコード進行で、大好きな曲です。抒情的な演奏で知られるジャズピアニスト、ビル・エバンスとトニーの共演でも録音されています。エバンスのみでの録音もあり、こちらはピアノトリオ(ピアノ、ドラム、ベース)。

Bill Evans のピアノトリオでの “Who Can I Turn To” も超おしゃれ

そのバージョンはピアノソロに始まり、途中から軽快なスウィングになってベースとドラムが入ってくる構成。ピアノはもちろんですが、ベースがすごくいいんですよね。

ちょっと脱線ですが、是非聴いていただきたいので、ビル・エバンスも出しちゃいますね。これ、ライブ盤だけど、ものすごく良い演奏です。それもこの曲だけじゃなくて。ちょっとマニアックになっちゃうけど、ベースがエディ・ゴメス。この太く、キレの良い音、ソロもドラマチック。ドラムがジャック・ディジョネット。この3者のせめぎあいもスリリング。

10曲目 “Speak Low” のお相手は Norah Jones(ノラ・ジョーンズ)

ノラ・ジョーンズは、自身のアルバムではちょっとカントリーっぽい渋いジャズを歌い、作曲家としてもピアニストしても高い評価を得ています。きっと、このアルバムのゲストの中で、一番自身のアルバムでの歌唱に近いのが彼女の歌唱だと思います。この曲は、ウッドベースの刻む4ビートが、キレがよく存在感のある音で大変心地よいです。ベーシストは Marshall Wood で、このアルバム全曲のベースを担当し、安定したビートで音楽全体を支えています。

11曲目 “This Is All I Ask” のお相手は Josh Groban(ジョシュ・グローバン)

クラッシックぽいポップス(クラシカルクロスオーバー)のジャンルで数多くのヒット曲をもつジョシュ。オリンピックなど公式行事での歌唱経験を多く持っています。なるほど発声法がクラッシックっぽくてで素晴らしい声です。

12曲目 “Watch What Happens” は Natalie Cole(ナタリー・コール)とともに

ナタリー・コールは大活躍したジャズ歌手ナット・キング・コールの実娘。彼女の声はとても可愛らしくて大好きです。前にご紹介した James Taylor のアルバムでもデュエットをしてましたね。

世界最高峰テノール、アンドレア・ボチェッリに負けない声のトニーにぶったまげよう!

13曲目 “Stranger In Paradise” のお相手は Andrea Bocelli(アンドレア・ボチェッリ)

アンドレア・ボチェッリはイタリアのテノール歌手で、12歳で外傷から脳内出血を起こして先天性緑内障が悪化し失明。法学博士号を取り弁護士として活躍するも歌手になる夢を捨てきれず、世界三大テノールの1人であるパヴァロッティに見いだされて1994年にデビューしました。その後、世界最高峰のテノール歌手として高く評価され、アルバムは世界で8,000万枚以上を売り上げています。さすがに素晴らしい歌声。でも85歳のトニーの声が、彼の声に全くひけをとらないことも驚きです。

14曲目 “The Way You Look Tonight” のお相手は Faith Hill(フェイス・ヒル)

フェイス・ヒルはアメリカのカントリー歌手。イントロはギターだけ、1コーラス目も歌とギターだけ。ジョー・パスを思わせるような、とてもロマンチックなギターに心を奪われます。ギタリストは Gray Sargent。このアルバムで全曲ギターを弾いています。

アルトゥーロ・サンドヴァルの情感たっぷりのトランペットに涙しよう!

15曲目 “Yesterday I Heard The Rain” は Alejandro Sanz (アレハンドロ・サンツ) と

サンツはスペインのシンガーソングライターでフラメンコの影響を受けた抒情的なポップミュージックで人気のようです。この曲は、スペイン語を公用語とするメキシコの有名な作曲家、Canache Armando Manzanero のボレロ “Esta tarde vi llover" という曲に歌詞をつけたものだそうです。だから、サンツがスペイン語で歌うのが、ドラマチックで美しいこの曲を一層引き立てるのですね。

また、この曲で心にしみる美しいトランペットを吹いているのは、Arturo Sandoval(アルトゥーロ・サンドヴァル)です。私が一番好きなトランぺッターなんですが、彼はキューバ出身で母国の国営バンドで活躍したのちアメリカに亡命し、機関銃のような早いフレーズでも全くぶれることなく正確にしかもメロディアスに演奏できる技量から、多くのジャズ奏者に尊敬されています。しかし、この曲ではソロでさえ早いフレーズは全く使わずゆったりと歌いあげています。こういう、絶対に吹きすぎないところが巨匠の偉いところです。

16曲目 “It Had To Be You” は Carrie Underwood(キャリー・アンダーウッド)と

キャリー・アンダーウッドはアメリカのカントリー歌手でシンガーソングライター。世界中で6400万枚を売り、受賞歴も数えきれないほどあります。冒頭部分、シンプルなピアノをバックに歌うトニーは語りかけるようで、しびれます。キャリーの声もビブラートのかかり具合が、とってもチャーミング。寝る前に聴きたい曲ですね。

17曲目 “When Do The Bells Ring For Me” は、Mariah Carey(マライア・キャリー)と

ご存じ、驚異的な CD 売り上げのシンガーソングライター。5オクターブの声域を持つと言われています。トニーの声が素晴らしすぎるせいか、このアルバムの他のシンガーが素晴らしすぎるせいか、マライアはそれほどでもないなと思えてしまいますが。

Tony Bennet Duet Ⅱでゴージャスな休暇を!士気向上して仕事を!

「あんた、まだ書くんか?」と叱られそうですが、最後にもうちょっとだけ。このアルバムは録音も非常に素晴らしいので、ぜひともなるべく良い再生装置を使って聴いていただきたいなと思います。

私がこのアルバムで一番感動したのは、アレンジ。次がガガ。そしてピアノ。次がドラムとベースの強力な安定感です。

みなさんは、このアルバムの何に一番感銘をうけるでしょうか?

私の御紹介が、皆さんの憩いのひと時を、あるいは出勤前の景気づけを、より良いものにするのに少しでもお役にたてたら幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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