[必聴]いま世界で活躍する日本人ジャズ ピアニスト8人|ゴニョ研
ジャズピアニストっていうと、まずアメリカ人が思い浮かびますよね。
でも実は、世界中のジャズミュージシャンから賞賛され、世界の実力派と共演を重ねている日本人ジャズピアニスト、意外とたくさんいるんです。
でも、あまり知られていない人も。
そこで、ここはひとつ、そんな素晴らしい日本人ピアニストについて語ってみようと思います。
歴史を振り返ると、龝吉 敏子(あきよし としこ)、辛島文雄(からしまふみお)を始め、世界への道を開拓した素晴らしいピアニストがいます。
しかし、こういう方々を取り上げると、とても長い記事になってしまいます!
なので若手優先ということで、ご了承くださいませ。
世界で注目される日本人ピアニストから元気をもらおう
海野雅威 (うんの・ただたか)
1980年 東京生まれ、東京藝術大学在学中からプロとして活動。
鈴木良雄、伊藤君子、大坂昌彦など、日本を代表する音楽家と共演しました。
2008年にニューヨークに活動拠点を移し、2013年にはマイルス・デイビスの名盤のドラマー、ジミー・コブのトリオのレギュラーメンバーとして、NYの老舗ジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードで1週間公演を行い、好評を博しました。
2016年には、世界中のジャズ・ミュージシャンに尊敬されるロイ・ハーグローヴのクインテットのピアニストに抜擢され、メンバーとして2度来日を果たしています。
そのロイ・ハーグローヴや、レジェンドというべきピアニスト、ハンク・ジョーンズ、ジャズのレコーディング・エンジニアとして最も有名なルディ・ヴァン・ゲルダーなど、多くのジャズの大御所たちに絶賛された逸話は、数え切れません。
その中のいくつかを、海野雅威のピアノの素晴らしさがわかる!ジャズ偉人との逸話集でご紹介しています。
現在もクリフトン・アンダーソン、ヴィンセント・ハーリング、ジャズメイア・ホーン、ジョン・ピザレリなど、精鋭やレジェンドたちから引っ張りだこ。
そんな彼に恐ろしい不運が襲ったのは、2020年9月。
ニューヨークの地下鉄駅構内で 暴漢によるヘイトクライムにあい、右肩を複雑骨折。
一時はピアニスト生命も危ぶまれました。
しかし、世界中から支援の輪が広がり、2度の手術とリハビリを乗り越え、彼はピアニストとして復帰を遂げます。
海野雅威のピアノは、伝統的なスタイルなのに、いつ聴いても新鮮。
そして、ときどきちょっとユーモラス。
だから、毎日聴いても飽きないんです。
私が、仕事を始める時に聴く曲はこれです。
15年以上前にリリーズされた、鈴木良雄トリオのアルバム “For You featuring Tadataka Unno" の1曲め。
曲の冒頭はピアノソロ。
テーマをゆったりした自由なテンポで、とてもダイナミックに演奏しています。
ここを聴くだけで胸がときめくんですよ。
試聴で聴けないのが、とても残念です。
このアルバムについても、For You featuring Tadataka Unno・鈴木良雄トリオ!これぞジャズ で、全曲試聴できるレビューをご紹介しています。
そして、疲れた時には、こんな曲でほっこりします。
では、動画を。
彼のソロも、リーダートリオも、みんな素晴らしいのですが、あんまり動画が見つからないんですよね。
というわけで、
1つめは、Nick Hempton Band での演奏です。
彼のアルバム “Catch & Rerelease" の中の1曲、"Change for a Doller" をどうぞ。
ピアノソロは、3分40秒から。
2つめにご紹介する動画は、最新アルバム “Get My Mojo Back" から、タイトル曲のプロモーションビデオを。
リーダーアルバムとしては、"Get My Mojo Back" が最新です。
ジャズピアニスト海野雅威の復帰第1弾CD・Get My Mojo Back
伝説のエンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダーの最後の仕事となった、ジミー・コブのアルバムでも、彼のピアノが聴けます。
2016年の録音で、1,5,8には、なんと、ロイ・ハーグローヴもフィーチャーされています。
このブログで、海野雅威の全てのリーダーアルバムのレビューを書いてます。
試聴もありますので、よろしかったら、こちらから。
海野雅威の情報集結!ライブ・アルバム・お宝動画・逸話等一覧!試聴付
早間美紀 (はやま・みき)
大阪音楽大学短期大学部ピアノ科卒。
ジャズピアノを藤井貞泰氏に師事し、96年、早間美紀トリオで、横浜プロムナードコンペティションにて優勝。
90年代後半にニューヨークへ単独渡米し、語学学校に通いながらグリニッジ・ビレッジにあるアーサーズ・タバーンでピアニストとして雇われ演奏する生活を続け、2000年には越智順子(vo)のCD発売関東ツアーに参加し、東京デビューする。それをきっかけに2002年まで 、東京を中心にジャズ・ライブ・ハウスに出演し、数多くの著名日本人ミュージシャンと共演。
2003年にニューヨークに戻ってから数ヵ月後には、ビンセント・ハーリング・カルテット、又グラミー賞受賞の世界的サックス奏者 ケニー・ギャレット・バンドのピアニストとして、ジャズフェスティバルに出演し、ニューヨークのジャズ界に大きくデビューする。
最新リリースアルバムは、神戸でのライブですね。
パーソネルはこんな風です。
ビタリ・ゴロブニョブ Vitaly Golovnev (trumpet and flugelhorn)
荒玉哲郎 Tetsuro Aratama (electric bass)
イグナット・クラフツォフ Ignat Kravtsov (drums)
トランペッターのゴロブニョブさんは、プライベートでもパートナーなんですね。
どうりで、息ビッタリ!
7歳の息子さんもいると知り、私は早間美紀が、ますます好きになりました。
このアルバムでは、7曲目の “Long Hands" が、ものすごくかっこいい!!
作曲は、ゴロブニョブさん。
ゴロブニョなんていうお名前からは全く想像できない、キレッキレのトランペットを吹いてます。
彼女のピアノは、挑戦的な印象なのだけれど、バラードではとても音が澄んで美しく、スウィングもノリノリ。
技術的に高いだけでなく、心にしみるんですね。
世界中から強豪が集まる厳しいニューヨークで、小さいクラブや教会で演奏しながら道を切り拓いていった強さや、多くのミュージシャンに愛される優しさが、表れているんじゃないのかな、と私は思うんです。
大林武司 (おおばやし・たけし)
1987年に広島生まれ。
20歳でバークリー音楽院へ。
在学中からプロとして活動を始め、音楽理論を師事したドラムのテリ・リン・キャリントンのバンドメンバーとして、プロ活動を開始します。
卒業後は、黒田拓也、ホセ・ジェームス、MISIA、テリ・リン・キャリントン等の様々なバンドのツアーに参加。
2016年にはジャズピアノの世界大会、ジャクソンビル・ジャズピアノ・コンセプションで1位を獲得。
同じ年、黒田卓也など、NYで活躍する日本人ジャズミュージシャンで結成した JSquad のメンバーとして、テレビ番組、報道ステーションのテーマを演奏しました。
作曲家として、クラッシックの演奏家としてのみでなく、ジャズ・アット・リンカーンセンターなどでは教育者としても活動しているようです。
さて、で、私がものすごく気に入っているのは、このアルバムです。
ニューヨークの新進気鋭ジャズメンで構成される、NEW CENTURY JAZZ QUINTET(ニュー・センチュリー・ジャズ・クィンテット)。
メンバーはこんなです。
大林武司 おおばやし たけし (piano)
中村恭士 なかむら やすし (base)
Benny Benack Ⅲ ベニー・べナック・Ⅲ (trumpet)
Tim Green ティム・グリーン (sax)
緻密で手堅いテーマの演奏だけで、私は痺れてしまいます。
そのあとのソロがまた、それぞれ個性的なのに無理がなく、センスがいい!!
本当にストレートアヘッドなジャズだけど新鮮で、いいアルバムです。
5曲めの “Tinder Madness" が、ノリノリで大好き。
メンバーのトランペッター、Benny Benack Ⅲの曲です。
ちょっとクスッとしちゃうのが、“Mochi Melonman"。
ハンコック大先生の例のやつの日本版ですかね?
餅? なの?
作曲は大林武司と Tim Green。
大林武司、作曲家としても最高でしょう?
桑原あい (くわばら・あい)
1991年生まれ。洗足学園高等学校音楽科ジャズピアノ専攻を卒業。
JAZZ JAPAN AWARD 2013 アルバム・オブ・ザ・イヤーなどの受賞多数。
モントルー・ジャズ・フェスティバルやアメリカ西海岸ツアーなど、海外でのライブ活動も精力的に行なっています。
最新リリースはライブアルバムで、スティーヴ・ガッド(drum)、ウィル・リー(base)とのトリオです。
9曲目の “The Back" はバラード。
聴く人が、それぞれの思いをかみしめて味わう名曲です。
この曲の誕生には、とっておきのエピソードがあります。
アルバム “Somehow, Someday, Somewhere" のプロモーション動画の中で彼女が語っているので、ご紹介しましょう。
2015年7月モントルージャズフェスティバルのソロピアノコンペティションに出場した彼女は、
その1年ちょと前から曲が書けないスランプ状態に陥っていました。
会場に来ていた、アメリカ音楽界のドン、クィンシー・ジョーンズに、彼女は、
「あなたの音楽はジャズ。このまま何も変えずに頑張りなさい」
という言葉をもらいます。
その時のクィンシーの背中、ずっと忘れられない大きな背中は、今でも彼女の支えなのです。
帰りの飛行機の中、彼女は、1年半ぶりに何も考えずに曲を書きました。
その曲がこの “The Back(背中)" です。
小曽根真 (おぞね・まこと)
1983年バークリー音大ジャズ作・編曲科を首席で卒業。同年米CBSと日本人初のレコード専属契約を結び、アルバム「OZONE」で全世界デビュー。以来、ソロ・ライブをはじめゲイリー・バートン、ブランフォード・マルサリス、パキート・デリベラなど世界的なトッププレイヤーとの共演や、自身のビッグ・バンド「No Name Horses」を率いてのツアーなど、ジャズの最前線で活躍。
2003年グラミー賞ノミネート。
2011年より国立音楽大学(演奏学科ジャズ専修)教授に就任し、2015年には「Jazz Festival at Conservatory 2015」を立ち上げるなど、次世代のジャズ演奏家の指導、育成にもあたる。
小曽根真のジャズは、うますぎて、もう言葉がないですよね。
最近では、クラッシックの分野でも大活躍し、世界中のオーケストラから引っ張りだこ。
むかしむかし…。
昔、30年くらい前ですが、名古屋のとあるホールに、小曽根真のライブを聴きに行ったんですよ。
多分、収容人数は数百人くらいだったと思うんですが、お客さんの数が、30人くらい…。
でもね、彼の演奏は渾身の所業。
一つ一つの音が、命があるかのような、一つ一つにまるで心があるかのような、そんな表現力は驚異的でした。
彼の演奏は、昔よりさらに磨きがかかっています。
そして人気はうなぎのぼり。
今は、名古屋ブルーノートでの2日間公演のチケットが、あっという間に売り切れますね。
彼が、スタンダードばかりを、演奏しているアルバムを“Spring is Here” 小曽根真 | 不朽の名作!でご紹介しています。
よろしかったら、そちらもぜひ。
そして、ジャズの最新リリースは、こちら。
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James Genus ジェームス・ジーナス(base)
Clarence Penn クラレンス・ペン(drums)
山中千尋 (やまなか・ちひろ)
桐朋学園大学音楽学部演奏学科を卒業後、バークリー音楽大学に留学。
卒業後、2001年10月にジャズピアノの名門レーベル「澤野工房」からデビュー作をリリース。
話題になりましたよね。
2020新年にはニューヨークアポロシアターでの公演もソールド・アウトとなった。2019年にはサンセバスチャンジャズフェスティバルのトップラインナップに、北京ブルーノート4公演、名門ジャズクラブのロンドンのロニー・スコット、パリのニュー・モーニング、ミラノのブルーノート、ワシントンのブルースアレイに出演。それらの公演はソールド・アウトとなるほどの評判を博し、英国ガーディアン紙のジャズレビューでも激賞される。米NBCラジオ、カーネギーホール、ケネディーセンターで自己のトリオで出演する他、米リンカーンセンターでのジェームス・P・ジョンソン・トリビュート記念コンサートにイーサン・アイバーソン、エリック・ルイスらと ともにソロで出演。またラプソディー・イン・ブルーを東京都交響楽団、NHK交響楽団、群馬交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団との共演でも絶賛を得る。
山中千尋(CHIHIRO YAMANAKA)のユニバーサル ミュージック ジャパン公式サイト,Biography
本当にうまいと思います。
テクニックがありすぎて音数が多いので、ちょっと疲れるかなあなんて…。
私が歳をとったせいかもしれません。
だけど、オリジナルは親しみやすいメロディの曲が多い。
私は、彼女が日本の民謡や古い歌謡曲を、とても魅力的にアレンジしているのが好きです。
この曲の作曲は筒美京平。
そして、最新リリースアルバムはこちら。
大西順子 (おおにし・じゅんこ)
1989年、バークリー音楽大学を卒業後、ニューヨークを中心にプロとしての活動を開始。
ベティ・カーター(vo)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ジャッキー・マクリーン(as)、 ミンガス・ビッグ・バンド、などと共演。
1993年、デビュー・アルバム『ワウ WOW』は大ベストセラー。
ものすごい売り上げだったと聞きます。
本当に流行りましたよね。
別にジャズが好きじゃない人でも知っているくらい、流行ったんじゃないでしょうか?
大西順子は休業宣言をして再稼働し、しばらくしてまた引退宣言をします。
この時、彼女に、演奏家としてピアノを弾き続けることを勧めたのは、なんと、日本が世界に誇る、あの、小澤征爾なんですね。
休業、再稼働後、突然の引退宣言、2013年9月、クラシックの祭典「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」へ出演。小澤征爾氏の猛烈な誘いに負け、一夜限りの復活とし出演を決める。小澤征爾率いるサイトウ・ キネン・オーケストラと大西順子トリオの共演は、この夏の大きな話題となり、素晴らしい 反響を呼ぶ。
力強いのに、本当に音がきれいで多彩ですよね。
ということで、最新リリースは、そのデトロイトを拠点に活躍する2人のリズム隊との共演作、“JATROIT" です。
上原ひろみ (うえはら・ひろみ)
1979年生まれ。
6歳からピアノと作曲を習う。
1999年にボストンのバークリー音楽院に入学。
在学中にジャズの名門テラークと契約し、2003年にアルバム『Another Mind』で世界デビューしました。
その後、アルバム『THE STANLEY CLARKE BAND FEAT. HIROMI』が第53回グラミー賞受賞。
2013年には、リーダーアルバム『MOVE』の全米発売に合わせ、アメリカで最も権威のあるジャズ専門誌『ダウン・ビート』の表紙にも登場しました。
チック・コリアやスタンリー・クラークなど、レジェンドと言われるようなジャズ・ミュージシャンと共演し、音楽家からも聴衆からも評論家からも絶賛されています。
彼女の魅力は、奔放で個性に満ちた即興演奏。
高い技術と豊かな想像力に支えられた、情熱的な演奏は本当に魅力的ですね。
彼女の最新リリースアルバムは、こちらです。
世界を舞台に活躍する日本人ピアニストは日本の誇り
いかがでしたか?
ジャズの本場は、やっぱりアメリカですが、そんな本場のミュージシャンと互角に渡り合える日本人ミュージシャン、たくさんいるんですね。
この記事を書いてみて、私は彼らの質の高さに、改めて驚かされています。
そして、それぞれ皆、個性豊かで魅力的です。
アンサンブルは、どんなジャンルでも演奏家同士が尊重し合うことが大切だけれど、いろいろなことが演奏しながら変わっていくジャズは、特に、信頼関係が大切ではないでしょうか。
たまたま見た動画で、ピアニストのハンク・ジョーンズが、ベーシストのジョージ・ムラーツに向かって、「彼は、私より先に、私が弾く次のコードが分かるんだよ」と言って笑っていました。
そんな風に常に共演者の意図を推測しながら演奏するジャズは、演奏を重ねるごとに絆も深まるのではないかと思います。
世界的に活躍する日本人ジャズ・ミュージシャンが増えれば増えるほど、世界中で日本人と絆の深い音楽家が増えていくわけです。
これほど素晴らしい国際交流はないのじゃないかしら。
そんなことを考えた私でした。
ジャズの素晴らしさは、ジャズとは何か?楽しく音楽を聴くだけでサルでもわかる!でも熱く語っております。
最後まで、お付き合いいただき、ありがとうございました。
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