チョコレートでたくさんの人を幸せに!NO児童労働|ゴニョ研

2018年1月23日へなちょこ情報

チョコレートの影の知りたくない事実

2002年に発表された数字では、13万人もの子どもが、カカオ農園で働いています。このうち1万2千人の子供は農園経営者の親族ではない子どもです。また農園経営者の子ども(6~17歳)の3分の1は1度も学校に行ったことがないのです。つまり、子どもがお手伝いとしてではなく労働力として働かされ、教育の機会も奪われているということです。さらには、農園での労働力として「買われ」あるいは「誘拐され」、違う地域から「船で運ばれてくる」子どももいて、子どもたちは、十分な説明もなくのこぎりなど危険な道具を扱い、危険な農薬に身をさらし、奴隷のように扱われている場合もあるというのです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

カカオの原産国の現状

カカオの生育に適した地域は赤道をはさんで南緯・北緯20度以内の地帯です。
世界で最もカカオ栽培が盛んで世界一のカカオ豆の生産量を誇る国はコートジボワールで、2015/2016年では、約158万トン。世界で消費されるカカオの3分の1以上をこの国で栽培していることになります。カカオの生産国は他にガーナ、インドネシア、エクアドル、カメルーン、ドミニカ共和国などです(1)が、ほとんどがいわゆる第3国です。国民の多くは貧しく、食料や飲み水の供給も不十分であったり、医療や教育の普及のために経済大国から支援を受けている国もあります。
中でも主要生産国であるコートジボワールは1993年からクーデターなどによる内政混乱が継続し、2011年に国民議会選挙が実施され、反政府勢力との和解や、橋、道路、学校、上水道、発電所など大規模な社会基盤インフラ整備は、やっと着手されたところです。農業は国の主幹産業であり8割以上が農業従事者です。

チョコレートを消費する国

チョコレート産業は1100億ドル(約11兆円)もの一大ビジネスであり、カカオ豆の需要は年々拡大を続けています。そしてチョコレートを主に消費する国は、ドイツ・スイス・アメリカなど欧米を中心とした経済大国。カカオにかかわる業者も大手はみないわゆる経済大国を拠点としており、中には世界中の国々をまたにかけて市場とするような巨大資本を持つ企業もあります。

カカオは経済効率の悪い作物、そして横行する搾取

カカオの実が収穫できるのは植え付けから3~6年後であり、病気や害虫にも弱く、また陰樹であるため大きくなるまでは他の木の陰で生育させねばなりません。このような事情からカカオの需要が増大しても早急に生産量を増やすことは不可能です。

また、カカオの木には無数の花が咲きますが結実するのは3%以下。カカオの木1本から800~2400粒のカカオ豆が採れますが、ここからできるチョコレートは900g~2700g。なんとも効率が悪い作物です。

カカオ豆の価格は、買い上げ制度があるガーナなど一部の国を除き、ロンドンとニューヨークの商品先物市場による国際相場の動きで決まるため乱高下することもあり、カカオの買い取り価格は大変不安定になります。そして驚くことに、私たちが支払うチョコレート代金のうち、カカオ農家にわたるのは、たったの数パーセントと言われています。チョコレートを作り販売するために必要な費用は原料費だけではなく、価格競争に勝つためには販売価格は押さえたいですし、業者にとっては原料費は安い方が良いに決まっています。

チョコレートが私たちの口に入るまでの工程は複雑

収穫されたカカオが、チョコレートになるまでの工程は非常に長く複雑です。

  1. 収穫
  2. 発酵・乾燥
  3. 集荷・袋詰め→市場へ
  4. 多くは船で他国へ輸送
  5. 選別
  6. 数種のカカオをブレンド
  7. 焙煎・磨砕
  8. さらに加工
  9. チョコレートの完成

チョコレートは数種のカカオが混ぜられている場合も多いため、原料となったカカオ農園の労働状況を追跡することはより困難になります。このことが企業の児童労働への対策を遅らせる一因になっているようです。

また、この磨砕などの過程は手作業で行うのは困難で機械で行われます。貧しい農民に機械の購入は困難なので自分たちで加工することはできず、買い叩かれてもカカオを売るしかありません。

チョコレートが児童労働を生む理由

これらのことから、私なりにチョコレートが児童労働を生む理由を整理してみました。

  • カカオの栽培・収穫に多くの人手が必要
  • 市場価格の不安定と搾取→安い労働力の必要性
  • 飢えや貧困に苦しみ、子どもをも働かせてしまう
  • 教育の普及も不十分なため、親も搾取や人権蹂躙に対する認識が低い
  • 人権蹂躙を認識しても対抗手段を持たない

こんなことなんでしょうか?

カカオ産業の変化

カカオ栽培に関わる児童労働は、2001年のある事件から明るみに出るようになりました。それは西アフリカのギニア湾で10歳から14歳の子供139人を乗せた船が消息を絶ったという事件です。船に乗っていたのは近隣の国からコートジボワールなどのカカオ農園で働くために売り渡される子どもたちだったのです。

この事件以降、カカオ産業に関わる児童労働が、欧米を中心に大きく報道されたために、NGOや消費者団体によるキャンペーンも行われました。これに動かされ、2000年には零細カカオ農家の支援を行うためのNPO法人である世界カカオ基金が設立されました。この基金に参加する企業は増大し、2017年にはマーズ、ハーシー、ネスレなどのグローバル企業のほか、日本からも明治、ロッテ、森永製菓、伊藤忠商事などが参加しています。

また、カカオ産業も児童労働問題解決に着手し始めました。米国のトム・ハーキン上院議員と、2001年にチョコレート産業における児童奴隷を議会でとりあげたエリオット・エンゲル下院議員が主導者となり、「ハーキン・エンゲル議定書」が作られました。これは「最悪の形態の児童労働」を廃止する目的で起草され、チョコレート製造業者協会と世界カカオ基金代表が署名しました。これを受けて、2002年には国際ココアイニシアチブが発足され、米国政府、ILO (国際労働機関)、労働組合、NGO、消費者団体等が、実態調査、児童労働予防プロジェクトの開発、実施等を行なってきました。また、日本では、児童労働を考える特定非営利活動法人"ACE" が、チョコレートと児童労働の問題について積極的な取り組みを行っています。