ウィントン・マルサリス スタンダードタイム Vol.3|ゴニョ研

2018年1月4日ジャズおすすめ

目次

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これもトランペットなの? と思うほどの音色の変化にびっくり

6曲目 “The Seductress (ザ・セデュクトレス) ”

これもウィントンの作曲です。そして、プランジャーというミュートを駆使して見事な演奏を繰り広げています。このプランジャーというミュートはトイレが詰まった時に直すアレの先端と同じ形をしているので、実際にアレの先端を使っている演奏家もいるそうですが、まあそんなことは超どうでもよくて、演奏家は右手でピストンを押さえ、左手でプランジャーを構えてベルをふさいだり開けたりしながら演奏するということです。ウィントンはおそらく、このプランジャーが使いたくて、その効果が最も映えるメロディを作曲したのでしょう。

7曲目 “A Sleeping Bee (ア・スリーピング・ビー) ”

曲のタイトルにちなんでいるわけではないんですが、ドラムのバチの話。これ、木製のバチではなく、ブラシという刷毛のようなバチを使っての軽やかなドラムソロから始まります。ずっとピアノトリオだけで演奏され、心地よくスウィングする曲。エリスのアドリブは、トリオの時でも決して奇をてらわず、そこに置くべき音だけをきっちりと選び取って弾いています。作曲は、あの “Over the Rainbow (オーバー・ザ・レインボー) ” を作曲したハロルド・アーレン。ミュージカルのために書いた曲です。

8曲目 “Big Butter and Egg Man (ビッグ・バター・アンド・エッグ・マン) ”

イントロはベースとドラム、テーマはトランペットとベース。ベースラインが素晴らしすぎて思わずメロディより、そちらに聴き入ってしまうほどです。そして、トランペットとベースだけでも、そしてベースは4ビートでボンボンボンボンと、1小節に4つの音しか弾いていないところも多いのに、どうしてものすごくスウィングするのかなあと不思議です。ベースソロもありますが、むしろ私はバッキングでの演奏にそそられました。

1926年にPercy Venable が歌手メイ・アリックスとサッチモのために書いた曲です。その年の録音のサッチモのソロは歴史的な高評価を得ているそうです。
下にご紹介したのが、それなのかどうか分かりませんが…。

9曲目 “The Very Thought of You (ザ・ベリー・ソート・オブ・ユー) ”

レイ・ノーブル作曲のポップスで、ビング・クロスビーなどの歌でヒットし、ジャズでもビリー・ホリデーエラ・フィッツジェラルドなど数多くの録音があります。このアルバムの録音では、しっとりとしたトランペットの音と繊細なピアノ、郷愁を誘うドラムのブラシ、歌心満点のベース、全員の音の美しさが存分に生かされています。

10曲目 “I Cover The Waterfront (波止場にたたずみ) ”

1932年、曲名と同じタイトルのマックス・ミラーのベストセラー小説にインスパイアされて作られた曲で、作詞エドワード・ハイマン、作曲ジョニー・グリーンビリー・ホリデイ、サラ・ヴォーンなど多くの録音があります。
残念ながら試聴では聴けないのですが、ウィントンのビブラート(音を細かく震わせること)のかけ方を注意深く聴いていると、短い音で微妙に細かくかかっているのが非常に魅力的で驚きます。

11曲目 “How are things in Grocca Morra (ハウ・アー・シングス・イン・グロッカ・モーラ) ”

1947年に公開されたミュージカル “フィニアンのレインボー” の中の曲でバートン・レーン作曲。おごそかなピアノのイントロの後、テンポルバート(自由にテンポを変えて)のまま、トランペットとピアノのデュオでテーマを演奏して終わり。この演奏があまりに息がぴったり過ぎて、始め、テンポルバートだということがわかりませんでした。ジャケットの写真そのまま、エリスのピアノの傍らに立つウィントン、要所要所でアイコンタクトを交わしながら演奏する2人を想像して聴いてください。

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