スティーヴィー・ワンダーの名曲!聴くだけでわかる彼の音楽人生|ゴニョ研
下段中央:スタジオで歌うスティーヴィー(筆者により編集)By Ralph Ruppert – Own work, CC BY-SA 4.0
上記以外の写真は全て Public Domain Tools
スティーヴィー・ワンダーはジャンルを超え、音楽界に絶大な影響を与えるづけるミュージシャン。
今回は彼の曲を聴くことで、彼の音楽人生をたどる旅に出たいと思います。
ぜひご一緒に。
※試聴の音量が若干大きいことがあります。
ボリュームを小さめにして聴き始められることをお勧めします。
- 1. スティーヴィー・ワンダーのデビューはなんと10代前半
- 2. スティーヴィーの名曲・マイ・シェリー・アモールは高校時代の恋の歌
- 3. “Happier Than The Mornig Sun"は、スティーヴィー・ワンダーランドの前奏曲
- 4. スティーヴィー全盛期の幕開け〜"Talking book"
- 5. スティーヴィー節全開!全曲名作〜"Innervisions"
- 6. “Fulfillingness’ First Finale"の歴史に残る名曲たち
- 7. “Songs In The Key of Life" スティーヴィーの人生の鍵となる名曲集
- 8. 1979年代以降のスティーヴィーの名曲
- 9. スティーヴィーの驚きの名曲は今後もリリースされると信じてる!
スティーヴィー・ワンダーのデビューはなんと10代前半
スティーヴィー・ワンダーが誕生したのは1950年。
保育器内の過量酸素が原因で、生まれてすぐに視力を失いました。
でも幼い頃から歌を歌い、ピアノ、ハーモニカ、ボンゴやドラムを演奏し、作曲もしていた。
11歳でモータウンレコードと契約し、プロの音楽家になるのです。
その頃の歌声が、すでに驚異的です。
レイ・チャールズが歌ってヒットした “Come Back Baby" 。
この頃、スティーヴィー・ワンダーは、リトル・スティーヴィー・ワンダーというステージネームでした。
とても可愛い声なのに、ビッグバンドをバックに余裕さえ感じられる歌いっぷり。
ちょっとしたメロディ・フェイクに、すでに抜群のセンスが感じられるじゃあないですか!
でも、歌だけじゃないんです。
この少しあとのスティーヴィーのステージから。
曲の始めのボンゴも、続くハーモニカも歌も、もちろん12歳のスティーヴィー・ワンダー!
この曲 “Fingertips" の作曲はスティーヴィーではありません。
しかし、この録音を聴く限り、この曲で重要なのはテーマではなく、怒涛のハーモニカソロ!
モータウンの複数アーティストのパッケージ・ツアーであるモータウン・レビューがツアーに出ると、「Fingertips」は12歳の天才ミュージシャン、スティーヴィーが吹く熱狂的なハーモニカのショーケースに様変わりし、彼の出番のエキサイティングな締めくくりの曲となった。
『スティーヴィー・ワンダー初のチャート入りシングル「Fingertips」の秘密』、udiscovermusic.jp、Written By Paul Sexton,2018.6,21
この曲は見事に大ヒット!
こんな曲が?!
このアルバムでは、最高にイカす、スティーヴィーのオルガンやドラムも聴くことができます。
この後、スティーヴィーは声変わりに苦しみます。
スティーヴィーの名曲・マイ・シェリー・アモールは高校時代の恋の歌
ですが、"little" を卒業したスティーヴィーが大ヒットさせたのは、この曲です。
邦題は「太陽のあたる場所」。
タイトルどおり、スティーヴィーの歌声とシンプルで大らかなメロディが心にしみる名曲です。
作詞ミラー・ノーマン、作曲ウェルス・ブライアン。
さらに、1969年に大ヒットした “My Cherie Amour" は誰もが知る名曲。
ヘンリー・コスビー、シルヴィア・モイとスティーヴィーの共作で完成しました。
スティーヴィー自身が歌う、スペイン語版とイタリア語版があり、今でも世界中で愛されています。
この曲がスティーヴィーの高校時代の恋の歌ってのは、驚きでしょ?
翌年、1970年には、この曲も大ヒット。
邦題は「涙を届けて」。
作詞作曲者として、スティーヴィの他に、のちに妻となるシリータ・ライトや、スティーヴィの母上のルーラ・メイ・ハーダウェイもクレジットされています。
アレンジは、モータウンでヒットを量産した凄腕アレンジャー Paul Riser。
インドの弦楽器シタールの音色が印象的。
コーラスやホーンセクションのパンチが効いて最高です。
このアルバムはスティーヴィーが初めて自身でプロデュースしたことでも知られています。
“Happier Than The Mornig Sun"は、スティーヴィー・ワンダーランドの前奏曲
10代前半からステージに立ち、数々の録音を経験したスティーヴィー。
モータウンの精鋭たちの演奏やアレンジを学びながら、音楽的にも成長していきました。
1972年にはアルバム “Music of Mind"(心の詩)をリリース。
スティーヴィはプロデューサーとして、より大きな力を発揮します。
そして
- マルコム・セシル (Malcolm Cecil)
- ロバート・マーゴーレフ (Robert Margouleff)
が制作に参加するのです。
2人の役割は、スティーヴィーの全盛期を支える “TONTO" と呼ばれる当時最先端のシンセサイザーを操ること。
この曲でも “TONTO" が使われています。
そして、スティーヴィーのトレードマークともいえるキーボード、クラビネットの音色も、この曲で聴くことができます。
この “Happier Than The Mornig Sun" は、いわば、この後花開くスティーヴィー・ワンダーランドの前奏曲 なのです。
スティーヴィー全盛期の幕開け〜"Talking book"
“Music of Mind"(心の詩)に続く3枚のアルバム、
- “Talking book"
- “Innervisions"
- “Fulfillingness’ First Finale"
は、スティーヴィーの3部作と呼ばれています。
多くのヒット曲が生まれ、連続してたくさんのグラミー賞を獲得しています。
では、"Talking book" からは、まずこの曲を。
“Superstition"(邦題:迷信)は、このアルバムにも参加しているギタリスト、ジェフ・ベックに提供された曲。
クラビネットの奏法やホーンセクションのフィルインなど、今なお新鮮なアレンジがスティーヴィーならでは。
「迷信」で使われている核となるキーボード・サウンドは、ワンダーのエレクトリック・キーボードをTONTOに通して出している。有名なベースラインはすべてTONTOのサウンドだ。
「スティーヴィー・ワンダーの名曲を彩った巨大シンセサイザーの物語」、MARTIN PORTER / DAVID GOGGIN、2018/11/25 09:50、RollingStone Japan
上記の記事には“TONTO"がアレンジにも大きな影響を与えたことも記されています。
“TONTO" はホーンセクションやストリングス、壮大なコーラスまで、全て一人で演奏できる。
どんな風に音を重ねるかも、試行錯誤できる。
もともとマルチプレイヤーだったスティーヴィー。
こんな飛び道具を手に入れれば、そりゃアレンジにも新境地が開けることでしょう。
史上最高のラブソングじゃないですか?
この曲については、“You Are the Sunshine of My Life"の魅力と素敵なカバーで、詳しくご紹介しています。
このアルバムには、ギタリストのレイ・パーカー・ジュニアやジャズ・サックス奏者のデヴィッド・サンボーンが参加しています。
このアルバムからの次の名曲は、“You and I"。
あまりにも美しいメロディとハーモニー。
シンセサイザーの音に古さは感じられるものの、端正なピアノと圧巻のヴォーカル。
これらの音の調和が作り出す世界は幻想的で、
切なさがこみ上げる名曲です。
スティーヴィー節全開!全曲名作〜"Innervisions"
“Innervisions" は3部作の中でもとりわけ評価の高いアルバムです。
この “Lving For The City" (邦題:汚れた街)は、社会問題を歌い、大ヒット。
アメリカでは1964年に公民権法が制定され、黒人への差別が合法であった時代は終わりを告げました。
しかし、貧困や差別が一気に解決されるはずもない。
この曲のヒットは1973年。
スティーヴィー23歳。
“Lving For The City" の舞台は、差別の根強い南部ミシシッピ。
ここに住む少年の体験や彼の家族の姿が、当時の黒人社会が抱える問題を鮮やかに浮かび上がらせています。
音楽活動と社会活動が、ともにスティーヴィーのライフワークでありミッションであることを象徴する曲です。
このアルバムからはもう1曲、“Don’t You Worry 'Bout a Thing"を。
これより前、アメリカには、マンボ、ボサノヴァ、という2大ラテンリズムの大ブームがありました。
しかし、この曲ほど完成度の高いラテン・ポップは、後にも先にも見当たらない。
“Don’t You Worry 'Bout a Thing"!オリジナルの魅力とカバーで、詳しくご紹介しております。
“Fulfillingness’ First Finale"の歴史に残る名曲たち
1974年に大ヒットしたこの “You Haven’t Done Nothin'" も、実は痛烈な政治批判が歌われています。
ですが、曲がかっこよすぎて、そんなことはどうでも良くなってしまうま。
鳴りひびくバスドラと重たいモーグ・ベース、からみつくクラビネット、刺さるようなホーン・セクションのフィルイン。
スティーヴィーのコールでドゥワップのコーラスを取るのはなんとジャクソン5!
前作、"Innervisions" のリリース直前に交通事故にあい、生死の境をさまよったスティーヴィー。
このことで人生観が変わったと語っています。
そして、このアルバムが復帰第一弾。
もう1曲、このアルバムから、対照的にメロウな曲 “Bird of Beauty" を。
これもブラジルのラテンのリズムを取り入れて、2番の歌詞はスペイン語で歌っています。
歌詞の翻訳は、ブラジル音楽を世界中で愛されるポップスに仕立て上げたセルジオ・メンデス。
“Songs In The Key of Life" スティーヴィーの人生の鍵となる名曲集
1976年には 2枚組のアルバム、“Songs In The Key of Life" がリリースされました。
プロデューサーとしてクレジットされているのはスティーヴィーひとり。
エンジニアは John Fischbach です。
またもや名曲ぞろいのこのアルバムの中でも、この “Another Star" が持つ高揚感は、中毒になってしまうほど強烈です。
この曲ではジョージ・ベンソンがギターとコーラスを担当、ネイザン・ワッツがベース。
そして、必聴なのは後半のフルートソロ!
ジャズ・ファンク・フルートの女王、Bobbi Humphrey (ボビー・ハンフリー)です。
次の “Isn’t she lovely" は、娘アイシャの誕生によせて作った曲。
ハーモニカのソロにからむのは、スティーヴィーとアイシャの会話です。
そして、スティーヴィーの音楽を語る上で絶対に忘れてはならないのは、この曲、“Sir Duke”!
スティーヴィーのアイドルがスウィング・ジャズの帝王デューク・エリントンだとは!
でもスティーヴィーの曲を聴き込めば納得できることです。
“Sir Duke”に込めたスティーヴィーの思い・名カバーも!
1979年代以降のスティーヴィーの名曲
1979年、ドキュメンタリー映画のサウンドトラックとして、アルバム“Journey through the Secret Life of Plants"(シークレット・ライフ)をリリース。
このアルバムでは編集でカットされ、1985年のアルバム “In Square Circle"(イン・スクエア・サークル)に収録されたのが、この “Overjoyed" 。
スティーヴィーならではの斬新なコード進行や、ごく自然なのに最高に盛り上がる転調に心が揺さぶられます。
この曲は素晴らしいカバーがたくさんあります!
“Overjoyed" 愛のバラード・その魅力と名カバー|ゴニョ研
1980年にリリースされたアルバム、 “Hotter than July" からは、まずこの曲を。
この “Happy Birthday" は、キング牧師の誕生日を祝日にする法案が議会で否決されたことに対して、抗議する歌なんです。
ノリノリのリズムとムッチャ盛り上がるメロディに夢中になり、そんなこと全く気づきませんでした。
このアルバムからのもう1曲はこれ。
“All I do"。
なんと美しい曲なんでしょうか?
1970年代、怒涛(どとう)のように名曲を作り続けたスティーヴィー。
1982年のアルバム、“Stevie Wonder’s Original Musiquarium" は、未発表の4曲を含むコンピレーションアルバム。
まあ、いわゆるベスト盤みたいな感じ。
でも、この曲、“Do I Do" は最高です!
シングル盤のバージョンは演奏時間5分程度ですが、アルバムバージョンは10分28秒。
後半、スティーヴィーのコールでトランペットソロを吹くのは、誰あろう、ジャズ界の親分ディジー・ガレスピー!
By Roland Godefroy – Own work, CC BY 3.0
“Another Star" のボビー・ハンフリーといい、このガレスピーといい、本当に人選が素晴らしい!
次は、映画 “The Woman in Red" のサウンドトラック盤の中から、ディオンヌ・ワーウィックとのデュエットが魅力的な “It’s You" を。
このアルバムから生まれた世界的大ヒットは、“I Just Called to Say I Love You"(邦題:心の愛)。
いい曲だとは思いますが…。
そして、1985年、スティーヴィーは、このプロジェクトに参加します。
“We are the World" は、アフリカの飢餓救済のためのプロジェクト。
ライオネル・リッチーとマイケル・ジャクソンが曲を書き、クインシー・ジョーンズがアレンジし、タクトも振りました。
スティーヴィーのアルバムとしては、1995年に “Conversation Peace"、2005年に “Time To Love" がリリースされますが、残念ながら1970年代のような驚異の名曲にはめぐり会えません。
でも、2012年 Take6 のアルバム “One" の中にこの曲を見つけた時、私はとてもうれしかった。
作詞作曲はスティーヴィー。
このバージョンのアレンジはスティーヴィーとTake6の Mark Kibble。
Take6 のコーラスとスティーヴィーの温かい歌声が溶け合うようです。
この曲、“Can’t Imagine Love Without You" は スティーヴィーのアルバム “Time To Love" にも収録されています。
そちらは楽器伴奏バージョンです。
スティーヴィーの驚きの名曲は今後もリリースされると信じてる!
2009年に国連ピース・メッセンジャーに任命され、社会活動家としても多忙なスティーヴィー。
私はそんなスティーヴィーも大好き。
彼が、自身が持つ影響力を、社会を良くするために使うのは素晴らしいこと。
でも、できれば、"Lving For The City"や、"You Haven’t Done Nothin'"、"Happy Birthday" のように、音楽で伝えてもらえたらなあと思うのです。
世界を揺るがすような音楽力で、また私たちの度肝を抜いてくれることを、首を長〜〜〜〜くして待っています。
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最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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